池上季実子、65歳。コロナで死の淵をさまよって変化したこと「もう終わってしまうかもしれないと…」
芸能活動50周年を迎えた、俳優の池上季実子さん(65歳)。現在公開中の映画『風の奏の君へ』では髪の毛の色を6回も脱色して初の老け役に挑戦するなど、映画・舞台と精力的に活動しています。
インスタグラムなどSNSも積極的に使い、日々明るく過ごしている池上さんですが、2022年にコロナウイルスに感染し倒れた際、生死の境をさまよったそうです。しかしその体験が、俳優・池上季実子を変えたと言います。お話を聞きました。
――本作、『風の奏の君へ』のオファーは、いつ頃だったのでしょうか?
池上:オファーが来たのは、2019年でした。ただ、今回の映画のお話が来るまでは、自分はどうなのかなと思っていました。
それまで二枚目路線と言いますか、ある意味で演じる役に偏りがあって。それはそれでありがたく、それで確立された池上季実子像があることもわかっていたので感謝はしていたのですが、一方で、役者なのでいろいろな役を演じたいとも思っていたんです。なので今回おばあちゃん役、二つ返事でした。
――物語の中心となる兄弟の祖母役は、どのように演じたのですか?
池上:シャキッとしたおばあちゃんではなく、足も悪くて座るのも一苦労なおばあさんがいいなというイメージが、まずありました。孫がおばあちゃんを心配して帰って来ている家、田舎にありそうな感じです。
――髪の毛の色も何度も抜いたそうで、見た目もガラリと変りましたね。
池上:白く染めただけでは、大きな画面に映ると分かってしまいますからね。リアルにしたかった。まず西麻布の美容院に行きましたが、そこでは2回やりましたが、あまりやってくれなかったんです(笑)。
それで知り合いの藤沢の美容院に行って、3回目。もともとがすごく黒い髪の毛なので、茶色や黄色になっちゃうんですね。でも白くならなきゃ意味がないと、4回、5回、合計6回やりました。それでもミルクティーみたいな色が残ったので、ロケ地の岡山に行って撮影までの3日間もナチュラルに馴染ませて、それから撮影しました。
――雄大な岡山の自然を背景に、恋愛などさざまなテーマで語られる物語でしたが、完成した映画を観てどうでしたか?
池上:人間の心の襞(ひだ)、特に若い3人の青春の心の襞(ひだ)をはじめ、日本の今の置かれている過疎化の問題、昔からあったお茶の伝統、そういうわたしたちが普段忘れがちなものをさりげなく伝えている映画で、わたしはすごく好きでした。そこへ松下奈緒さんが奏でるピアノが、おしゃれにミックスしている。地味ではありますが、さりげなくテーマがつまっている作品ですので、一度ご覧になってほしいです。
確立された池上季実子像を変えたかった
リアルな白髪のため、髪の毛を6回も脱色
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