将来への投資ばかりに夢中になって、今の自分をないがしろにしていたのではないか。戸惑(とまど)うえぴこさんに届いたのは、1本のハンドソープです。
友人からの贈り物で、惚れ惚れするほど素敵なデザイン。調べてみたら、なんと1本5000円。倹約を良しとしていたえぴこさんにとっては、破格のお値段です。
おそらくえぴこさんご自身では手にも取らず、到底購入しない代物。おそるおそる使ってみたら、これがもう、夢のような香りで洗いあがりもしっとり。
効果はそれだけではありません。洗面所にお気に入りのハンドソープが置いてあるだけで、そこで過ごす時間が宝物のようになるのです。
生活にひとつ究極の「好き」があるだけで、心が潤う。元気が出て、明日も頑張ろうと思える。ささやかですが、人が生きている意味は、こんなところにあるのかもしれません。
もちろん、衣食住すべてを「好き」で満たすのは大変ですし、お金もかかります。貯金を崩すのは本末転倒。とはいえ、今の自分と将来の自分とうまく折り合いをつけ、日常を彩れば笑顔が生まれます。
1本のハンドソープが、えぴこさんのマインドを豊かなものに変えました。その後の貯金の計画がどう向上したのか、ぜひ、あなたの目で確かめてみてください。
<文/森美樹>
森美樹
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『
主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『
母親病』(新潮社)、『
神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。
X:@morimikixxx