そして2人の順番が回ってきて、お賽銭を入れお参りをしました。
「その神社は破魔矢とお札を無人販売していて。『料金はお賽銭箱に入れてください』と書いてありました。
健一さんがサッと破魔矢を手に取ってそのまま歩き出したので一瞬驚いたのですが、『あ、お参りのときにちゃんと料金を入れていたんだ? さすが常連だね』と言いながらついて行ったんですよ」
すると健一さんが「
まさか! こんなの一応書いてあるだけで、誰も見てないし払うヤツなんていないでしょ」と、何も悪いと思っていない笑顔を向けてきたそうで……。

「とても驚いてしまい、つい『なんで? お金はあるのに……誰も見てないって、神様が見てるよ』と私が口走ったら、『バチが当たるとかそういうこと言ってるの?
でも俺、ずっと成績優秀で、希望の会社に入ってバリバリ働いて、病気も怪我もしたことないし、別に平気じゃない?』とあっけらかんとしていて『あ、この人ヤバい人なのかも』と一気に身構えてしまったんですよね」
さすがに美羽さんの表情が曇ったと察した健一さん。
「分かったから、もうこれで仲直りしよう」と財布から千円札を取り出すと、空に向かって放り投げたのです。そのまま「神様ちゃんと払いましたよ〜」と言い、次の目的地の神社へ歩き出しました。
「お金をそんなふうに雑に扱うことも、誰も見ていなければ何をしてもいいという考えも信じられなくて、価値観が合わないと思いました。
私が歩道に落ちた千円札を拾い『
今からさっきの神社に戻って、お賽銭箱に入れてくるね』と踵を返すと、健一さんは困った顔をして『え、なんで?』としばらくついてきました。でも私が急に不機嫌になったことにムカついてきたのか、立ち止まると『
もう勝手にしろよ!』と私に背を向けて去っていったんですよ」
美羽さんは神社に戻り、行列に並び直すと「
先ほどは失礼しました。次こそは私と価値観の合う素敵な男性とご縁がありますように」と祈りながら、自分のお財布から千円札を取り出して計二千円をお賽銭箱に入れました。