誰にも話すことができず、大人になってトラウマが現れることも
――性被害に遭っても、保護者に話すことができない子どもが多いのはなぜなのでしょうか。
今西先生:「親を悲しませたくない」と思って被害にあったことを言えない子どもや、幼いために自分がされたことが性被害だと理解できないことも多いです。そのような場合は、成長してからトラウマ(心的外傷)が現れることがあります。
そもそも、大人でも自分で警察に行って訴えたり、加害者から逃げるのが難しいですが、子どもにはもっと難しく、できないという問題があります。
――性被害を防ぐために、子どもにどんなことを教えるべきなのでしょうか。
今西先生:まずは包括的性教育(体の仕組みだけでなく、人間関係など幅広いテーマを含む性教育)として、プライベートゾーンについて教えることが大切です。
「水着や下着で隠れる場所と口は、自分しか触れてはいけない場所だよ」としっかりと伝えてあげてください。ユネスコ(国連教育科学文化機関)では、5歳から性教育を始める方針を示しています。
また、「同意学習(同意教育)」も大切です。私が渡米した時に見学した保育園では、子ども達に水が入ったコップを渡し、クラスメイトに「お水を一緒に飲まない?」と話しかける授業が行われていました。
一見すると性被害と直接関係ないような気がしますが、イエス、ノーの意思を伝えたり、相手がノーと言った時は引き下がるように教えることで、「バウンダリー(自分と他者を区別する境界線)」を学ぶことができます。
また、重要なのは、先生もその授業に参加しており、「先生にもノーを言ってもいいのだ」「そのノーは尊重されるべきものなのだ」と実体験を持って身につけていくことです。