「前から気になっていた池袋にあるスパ施設に行ったんですよ。雰囲気が良くって食事も美味しいと評判だったので、ワクワクしながら入館しました」
気持ちよくサウナで汗を流した咲子さんは、お腹が空いたのでレストランフロアに向かいました。
「席についてメニューを手に取ろうとしたら、知ってる顔が目に入って…なんと私が通っているヨガスクールのインストラクター・F先生(40歳)と生徒のM子さん(35歳/主婦)が向かい合わせじゃなく、あえて隣に座ってイチャイチャ食事していたんですよ」
F先生も結婚していて娘さんもいると聞いていたし、2人はダブル不倫に違いないと思った咲子さんは…。

「面倒な事に巻き込まれるのは嫌なので、見なかった事にしようと思い、席を立とうとしたら館内着のすそがコップに引っかかって水をこぼしてしまったんです」
店員さんが駆け寄り水をふいてくれていると、バタバタしている様子に気がついたF先生とM子さんがこちらを見てきました。
「そしたら2人とバッチリ目が合ってしまって…しばし気まずい沈黙の時間が流れたのですが、F先生に『お~咲子さん、偶然だね!こっちきて一緒に食べようよ~』と誘われてしまい、え!嘘でしょ?と思いましたね」
引きつった笑顔のF先生とM子さんから「たまたま、おたがいサウナが好きだという話になって、2人で来たのは今日が初めてで…」と言い訳めいた話を長々とされてウンザリする咲子さん。
「そんな苦しい言い訳信じられないですよね。既婚のおじさんとおばさんが何もないのに2人きりでスパになんか行くはずないでしょ?って感じでした」
せっかく楽しみにしていた豚しゃぶ定食が、つまらない話を聞かされながら食べたので全く味わえなかったそうです。
<文&イラスト/鈴木詩子>
鈴木詩子
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:
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