農薬使用の基準は科学のアップデートによって見直されるもの

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最後にもう一つ、農薬と子どもの発達に関連するトピックスを整理しておきましょう。
2010年に米国ハーバード大学らによって発表された研究によれば、低濃度であっても有機リン系の農薬を摂取した子どもは、注意欠陥・多動性障害(ADHD)になりやすいということ。このニュースは当時日本でも大きく取り上げられ、記憶に残っている人はいらっしゃるかもしれません。
これらを理由に、慣行野菜が危険であるということではありません。通常並んでいる野菜は日本の農薬取締法に基づいた安全基準が適用されており、安全性は高いと判断されています。
しかしながら少しだけでも頭に入れておきたいのは、農産物の農薬使用については、科学的エビデンスのアップデートによって基準の見直しがされるということ。
日本と海外では基準や法律は異なり、日本において使用可能な農薬であっても、アメリカや欧州では使用が禁止されている農薬(ネオニコチノイド系農薬や有機リン系農薬など)があるということです。
これらのことから、今の段階で出回っている慣行野菜について100%安全であるとか、有機野菜の方が絶対に安心だと判定を下すのではなく、野菜の安全性については個人の判断にゆだねられると言わざるを得ません。もちろん有機野菜を給食に導入するかについては別次元の問題です。
今回の品川区から発せられた言葉や文面だけでとっさに判断するよりは、日本や世界を取り巻く有機農業の背景や現状を冷静に捉えながら、個人が素直な意見を発信することの重要性を確認させてもらえたような気がしています。
そして何よりも、導入したから終わりということではなく、導入後の子どもたちの反応や影響については丁寧に確認して議論を続けていく必要があるのではないかと、私は考えています。
さあ皆さんは、給食のオーガニック野菜をどう評価しますか?
<文/食文化研究家 スギアカツキ>