――鈴木亮平さん演じる俊樹との関係がとても印象的でしたが、撮影はどのように進みましたか?
ウイカ:亮平さんもわたしも、普段は標準語で話しているのですが、この撮影中はずっと、ふたりとも関西弁で会話をしていました。撮影以外の時間もずっと喋っていたように思います(笑)。音楽や世界遺産の話など、いろいろな話題でおしゃべりさせていただきました。
――幼なじみという関係性なので、役作りにもなりそうです。
ウイカ:幼なじみって共有してきたモノの数が、他の友人とは違っていると思うんです。経験値だけじゃなく、お互いの生態や気質を成長の中で認知し合うというか。「あ、こういうことを気にするんだ」みたいなことを、自然と知っている関係性なんだろうなと思いました。
たとえばスマホを返すときの仕草一つ取っても、そういう細かなところから人間性を感じ取るようなことってあるじゃないですか。メモを取ったりするわけではないですが、なんとなくその人の隣にいて感覚を掴んでいく作業を、雑談の中で行っていたように思います。亮平さんが、「この人と何十年も一緒に過ごしたら、きっとこういう空気感になるだろうな」という雰囲気を演じながら一緒に作ってくださったんです。
私自身はスポットでの登場シーンが多かったので、他の撮影シーンの空気感などは、クランクインの段階ではまだよく知らない状態でした。そうしたなか、作品全体の雰囲気や前田監督とのやり取りを通して亮平さん自身が掴んでいたものを、カメラが回っていない時間にも、ずっと私に伝えてくださっていたんです。
そのやり取りのおかげで、駒子というキャラクターにたどり着けたように思っています。
――近年、俳優業も大活躍ですが、仕事・人生において、大事にしていることはありますか?
ウイカ:仕事に限らず、振り返って人生全体で言えることなんですが、最近、自分の中で「モットーは何ですか?」と聞かれたときに答えるようにしているのが、「ブレていい」ということなんです。
よく「ブレない軸」や「芯がある人」って言うじゃないですか。もちろん、それも素晴らしいことですよね。でも私は、ブレていいと思っていて。自分のこれまでの生き方を振り返ってみたときに、本当に好奇心の赴くままに、興味のあること、いろんなことに挑戦してきたんです(笑)。
たとえば、最初は声優になりたいと思っていたんですが、途中で音楽に出会って「音楽をやりたい」って気持ちになって。さらに舞台にも惹かれて、そのたびに自分の興味や好奇心に従って動いてきました。声優の夢も諦めずに学校に通ったり、劇団に所属したり、俳優として世界を広げようと東京に来て、ひょんなきっかけで突然アイドルになったりして。
そうして振り返ると、「結局あなたは何がしたいの?」って聞かれても、「わかりません」と答えてしまうくらい、一本の強固なブレない芯、軸みたいなものはなかったけれども、フニャフニャの芯無し、というわけでもなかった。
――意味が違うってことですよね。
ウイカ:ブレない方が「鉄骨」のような、がっしりした芯を持っているとしたら、私は「しなる竹や縦横無尽に揺れるゴム製」みたいな芯のイメージ。もし最初からガチガチな芯を立てていたら、途中で挫折していたと思うんです。そこまでガチッと決めずに、グニャッと動けたからこそ、次々に新しい世界を経験できた。それが、いま役者としての自分を支える財産になっていると感じています。
もちろん、アスリートの方のように、幼い頃から一つのことに打ち込んできた方への憧れはあります。でも私は飽き性なところがありますし、いろんなことに目移りしてしまう。なので無理に「一本の道」を決め込まなくていいんじゃないかと思います。
ブレながらも少しずつ自分を構築するタイプ。だからこそ、今みたいにいろんな選択肢を持てることがありがたいですし、それによって出会えた役や作品にも、すごく感謝しています。