朝ドラ『あんぱん』54歳俳優がとにかくカッコいい。20年以上前の主演作でも光っていた“軽妙さ”
月9ドラマの代表作
竹野内豊が俳優本人として、さらに演技中にもまとう空気感は、今も昔も常に変わらずにカッコいい。現在54歳。まだ半分の年齢にも達していない25歳で出演した代表作を思い出してみる。
1997年にフジテレビの月9枠で放送され、最高視聴率26.5%を記録した名作テレビドラマ『ビーチボーイズ』である。竹野内より年少の反町隆史との黄金コンビが、夏の海という鉄板設定で大人の青春を絵に描いたような作品である。
竹野内が演じたのは、エリート商社マン・鈴木海都。クールな表情で電車に揺られているだけで絵になるのは、ほんの微動だけで視聴者をときめかせる現在も変わらない。このクールな存在感を持ち味とする一方で、わちゃわちゃ茶目っ気たっぷりキャラが板についていたのが、同じ放送枠の『できちゃった結婚』(2001年)だ。
洗練された軽妙な演技
竹野内豊ファンである筆者は、『できちゃった結婚』がベスト竹野内豊作品だと思っている。おどけているかと思えば、ふとクールな表情も垣間見せる。逆にクール過ぎたときは、目一杯おどけて表情をゆるめる。という塩梅が絶妙なのである。
同作を引き合いにだしたのは、『あんぱん』初登場場面とのちょっとした類似を考えてみたいからである。初登場が医院前だった。竹野内豊とは、何かしら建物の前で特に軽妙な演技が冴える俳優だと思う。
『できちゃった結婚』では例えば第2話でタイトルにあるできちゃった結婚の報告をするために、千葉真一演じる相手の父親に挨拶に行く場面がある。家の前まできて、イケイケCMディレクター・平尾隆之介(竹野内豊)は尻込みする。カッコ悪いの何の。ひたすらおどおど。なかなか中に入らずに、玄関前でだらだらわちゃわちゃを長々繰り返す。でもずっと見てられる。
このわちゃわちゃ軽妙な演技が、長い歳月を経て研ぎ澄まされ、短縮された形で洗練を極めた。それが、『あんぱん』初登場のスリーショットなのだと結論づけてみたくなった。
<文/加賀谷健> 1
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