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「これで笑ってちゃダメでしょ」『水ダウ』企画に“差別的”と批判の声。真剣な人たちをバカにしすぎでは

賞レース決勝でも

 ただ、テレビ番組において、声を上げる人を“笑いに昇華”させるケースは珍しくない。 『R-1グランプリ2024』(カンテレ・フジテレビ系)では、お笑い芸人の吉住が“デモ活動をしている女性が婚約者の実家を訪れる”というコントを披露した。ネタ中にはプラカードと拡声器を持ち、「さっきまでデモ活動してて」「今朝の政治家の汚職のニュースあったじゃないですか、あれ見てたら血が騒いじゃって」と語る。両親から結婚を反対されると「大丈夫ですか? 私を敵に回して」「私、自分の意見を押し通すプロなんですよ」と口にした。 “声を上げる人”がコントの題材にされることで、彼らの主張や行動は「過激で危険なもの」として戯画化され、社会的な問題提起そのものが冷笑の対象になっているように感じられる。さらには、「こうした人を嘲笑しても構わない」という印象を視聴者に与えているようにも見える。

脚本家の意向を無視してヒステリックに描く

 声を上げる人が“ユーモラス”に描かれるのはお笑いに限らない。2022年1月1日に放送された『相棒20 元日スペシャル』(テレビ朝日系)ではこんなシーンがあった。  非正規労働者の賃金格差が問題視されているデイリーハピネス本社から杉下右京(水谷豊)と冠城亘(反町隆史)が出てきた際、非正規差別を訴えてプラカードを掲げる女性たちに取り囲まれ、拡声器で「格差をなくせ」と不満の声を浴びせられる。  このシーンは脚本家の意向ではない。同エピソードの脚本を担当した太田愛氏は放送終了後、自身のブログで「右京さんと亘さんが、鉄道会社の子会社であるデイリーハピネス本社で、プラカードを掲げた人々に取り囲まれるというシーンは脚本では存在しませんでした」と指摘。  さらには、「自分たちと次の世代の非正規雇用者のために、なんとか、か細いながらも声をあげようとしている人々がおり、それを支えようとしている人々がいます。そのような現実を数々のルポルタージュを読み、当事者の方々のお話を伺いながら執筆しましたので、訴訟を起こした当事者である非正規の店舗のおばさんたちが、あのようにいきり立ったヒステリックな人々として描かれるとは思ってもいませんでした」と辛い胸中を語った。  脚本家の意思を無視してでも、ドラマで「声を上げる人=ヤバいやつ」として描かれたことを鑑みると、もはやその認識はテレビ業界で共通しているものなのかもしれない。
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テレビが冷笑主義を作っている?
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