
自分の気持ちを吐き出すために始めた詩作が、音楽活動につながり、やがて夫となる「殿ちん」と出会います。殿ちんのおかげで少しずつ症状は改善しますが、状況は一進一退。白髪もそのままで、当時は隠すことに必死になっていました。
ブリーチに金髪。コンプレックスをカバーするための工夫が、「素敵ですね」という誉め言葉となって返ってきたのは、姫さんにとっても意外だったのかもしれません。しかしその驚きがうれしさに変わり、姫さんは気づきを得ました。「コンプレックスだと思っていたことが、『特別な私』を演出する強みになった」と。
人には皆、何かしらコンプレックスがあると思います。どうしたってマイナスにとらえてしまいますが、他人様の目には素敵に映っているかもしれないのです。病気も、身体的な特徴も、つらさや苦しみと対峙して、努力を重ねた末の産物だとしたら。全部をまるごと愛してあげたくなりませんか。
そこから本当に輝く笑顔と、人生が幕をあけるのではないでしょうか。

20代は、まだ白髪とは無縁な年代。ブリーチや金髪も、おしゃれとして楽しむのが一般的ですが、姫さんの場合は異なりました。
「白髪になってしまった自分の髪の毛が嫌いすぎて」という悲しい本音が根底にあって、しかも毎日、鏡で悲しさと見つめ合わなくてはなりません。
毎月のように白髪染めをして、頭皮もボロボロになりました。紆余曲折を経て、「頭皮につかないよう黒が残っていた部分もブリーチして真っ白に。そこから金髪にするように」という美容師さんの提案を受け入れます。
「透けるような金髪」は美しくもありましたが、姫さんご自身は好きになれなかったそうです。
白髪をカミングアウトしたのは、コロナ禍がきっかけでした。久しぶりに美容院に行ってブリーチした時、髪の毛が半分ほど切れてしまったのです。苦楽を共にした髪の毛が、限界を迎えてしまったのでしょうか。「白髪の地毛で生きていくしかない状況」を、姫さんはどう受け止めたのでしょう。
「もう隠したりごまかしたりしなくていいんだ」というストレスから、姫さんは解放されたといいます。正真正銘、まっさらな自分で生きられる。解放感と清々しさは、本書に掲載されている写真で、あふれるほど伝わってきますよね。