――家庭でAIを活用するメリットは何だと思いますか?
まり:子育てをしていると、知識を得たいというよりは、相談したい、選択肢が知りたいと思うことが多い気がします。
以前、小6の長男が夜間に「お腹にブツブツがある」と見せてきたことがありました。「赤いブツブツ」「子ども」などのキーワードで検索すると大量の情報が出てきましたが、つい怖い病気の可能性ばかり探ってしまい、不安がつのるばかりでした。
そこで、ChatGPTに発疹の写真を添えて、「どうしたらいいの」と聞くと、「おそらく水ぼうそうの可能性があります」と回答があり、「予防接種済みなら重症化はしにくい」「発熱など、今後あらわれる可能性のある症状」と教えてくれました。「水ぼうそうかもしれないんだ」「病院が開いたら受診すれば大丈夫」と思えたことで肩の荷がスッと降りました。
もちろん確定診断ではないので注意は必要ですが、私自身の気持ちのサポート面の役割が大きかったです。不安な気持ちを聞いてもらって、選択肢を示してもらえたことで、「これから熱が出るかもしれないから、今のうちにドラッグストアで必要なものを買ってこよう」と、今やれることが明確になり、少し落ち着くことができました。

※イメージです
――他にも、日常生活でAIが役立った場面はありますか?
まり:ChatGPTに契約書を読んでもらっています。賃貸マンションのLEDシーリングライトがチカチカしていたとき、自分で取り替えるべきなのか、管理会社にいうべきか迷いました。そこで、スキャンした契約書のPDFをChatGPTに読み込ませて、「照明器具の交換は誰の責任になっていますか?」と聞くと、「第8条3項では、設備故障は賃貸人が修繕とあります」と回答が瞬時にあり、無償で管理会社に対応してもらうことができました。
また、家のWi-Fiが何度再起動しても不安定で困っていたとき、モデムとルーターの写真を撮ってChatGPTに送り、「ネットの接続がときどき切れるんだけど、原因って何だと思う?」と相談しました。すると、「二重ルーターになっている可能性があります」とアドバイスがありました。二重ルーターとは、家庭内でルーターが重複して接続され、通信が不安定になる状態です。写真の隅々まで情報を読み取って、スイッチの状態や、LANケーブルをさしこむ場所までアドバイスしてくれたので、接続状況を改善することができました。
――家庭や育児の分野で、ChatGPTがさらに活用されるようになるためには何が必要だと思いますか?
まり:AIの分野って、どうしても男性エンジニアが中心になって進んでいるところがあって、活用の場もビジネスシーンに偏りがちなんですよね。でも実は、家庭の中にもテクノロジーの力が役立つ場面ってたくさんあると思うんです。
だけど現実には、新しいテクノロジーが家庭にまでなかなか届いていない。便利なツールがあっても忙しい日常の中では「どう使ったらいいのか分からない」「難しそう」と感じて、取り入れられないままになっていることも多い気がします。
家事や育児を担っている人たちが、こうした最新技術の恩恵から取り残されてしまうのは、本当にもったいない。私自身も専業主婦ですが、「こういうときにAIが使えたらいいな」と思うことが日々たくさんあります。だからこそ、家庭の中でのAIの活かし方をもっと探っていきたいし、暮らしの視点からこの分野を少しずつ広げていけたらと思っています。
【まり】
国立大学の理系の大学院を卒業後、メーカーで技術・開発職を経験。妊娠、出産を機に退職し、現在は男子3兄弟(小6、小4、3歳)の母。家事子育てにAIを導入したことで、NHK「チルシル」、日テレ「DayDay.」他、複数メディアに出演。著書に『
おうち遊びアイデア帳』。note:
めんどくさいことをテクノロジーで解決したい主婦、X:
@m316jp2
<取材・文/都田ミツコ>
都田ミツコ
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。