「信号が変わりその彼女も走り出したので、ちょっと追いつくまで時間がかかりましたが、ようやく彼女の前に回りこみ鍵を渡すことができたんですよ」

※画像はイメージです(以下、同じ)
その彼女はビックリしながらも丁寧にお礼を言うと颯爽(さっそう)と走り去って行きましたが、まさか2人がかりで鍵を返そうと必死に追いかけてきていたとは想像もしていないようでした。
「そして無事に役割を果たしたと一安心して戻ろうとしたら、
なんとさっきの汗だくの男性がゆっくりと私めがけて走ってきていて驚きました。てっきりもうどこかで涼んでいるか、仕事先に向かっているだろうと思っていたので」
慌ててその男性に駆け寄ると「すみません、見ず知らずの方にいきなり変なお願いをしてしまって」と謝ってきたそう。
「もうそんなことどうでもいいから、とりあえずどこか涼しいところで休んで、水分補給した方がいいですよと、いちばん近くのファミレスの場所を教えました」
引くぐらい汗びしょびしょで、明らかに声に力が入っていない男性。美咲さんは自分のハンディ扇風機を渡し、そのまま持っていてほしいと伝えました。
「男性は『
お礼がしたいので、嫌じゃなければ連絡をください』と私に名刺を手渡して、扇風機の風を浴びながらファミレスに向かっていきました。いくら目の前で鍵を落とされたとはいえ、
通りすがりの人のために熱中症になりかけるような行動をとるなんて、なかなかヤバい人だなと思ったのをよく憶えています」
そしていつの間にかその名刺の存在も忘れて、数週間経ったある日……。