敵国との銃撃戦などがなかったことは、戦争を描いたドラマにおいて特筆すべき点ではないか。その背景として「
敵国との戦いを描けば描くほど、どうしてもヒロイズムに陥ってしまう。カッコ良くなっちゃうんですね」と話す。

「戦争を題材にした作品の描き手は『戦争反対』の立場で制作していると思います。ただ、派手な戦闘シーンなどを描くと、どうしても戦争に参加している人がカッコ良く映る。
『戦争反対』という気持ちで描いているにもかかわらず、『戦争賛美』のメッセージに変わってしまう気がするんです。だから、『戦争に参加した個人がどのような経験をしたのか』をやるほうが伝わりやすいと考えました」
作中での“退場者”、つまり亡くなってしまう人物は少なくないが、戦死した登場人物の死に際は描かれていない。戦争で亡くなった人を英雄的に見せないことが一貫されているからなのかもしれない。
また、戦争編では嵩の幼馴染・田川岩男(濱尾ノリタカ)が、中国人の少年であるリン・シュエリャン(渋谷そらじ)に“両親の仇”として殺された。この悲劇にはやなせさんの絵本を原作にしたアニメ『チリンの鈴』が影響しているという。

「『チリンの鈴』は狼・ウォーに母親や仲間を殺された主人公の子羊・チリンがウォーに育てられて、最終的には復讐を達成する、という内容です。リン少年はチリンで、ウォーが岩男なのですが、
『チリンの鈴』をオマージュした展開は最初からやろうと決めていて、そこから逆算して岩男という人物を登場させました」