「大好きだった伯母が孤独死した」39歳・独身女性の不安と焦りを、あえて“ポップ”に描く狙いとは?『ひとりでしにたい』制作統括インタビュー
カレー沢薫氏とドネリー美咲氏(原案協力)が手がけた同名漫画を原作としている現在放送中の土曜ドラマ『ひとりでしにたい』(土曜よる10時~、NHK総合テレビ)は、誰もが目を背けがちなトピックにコミカルに切り込んでいく。
39歳の未婚女性で、推し活に没頭するなど独身ライフを満喫している学芸員・山口鳴海(綾瀬はるか)が主人公。伯母・光子(山口紗弥加)が孤独死したことをきっかけに、今後の人生に不安を抱いた鳴海が終活を始める様子を描いたヒューマンドラマとなっている。
「終活」「孤独死」という重いトピックを扱いながらも、ポップな演出によって明るい空気感に包まれている本作。終活について前向きに考えたくなるような本作の制作統括を務める高城朝子氏に、作中に流れる明るい空気感をどのように作り上げているのかなどについて話を聞いた。
「終活」「孤独死」をメインテーマとしながらも、明るい雰囲気に包まれている本作だが、高城氏は「ポップすぎると共感してもらえないし、リアルすぎても引かせてしまう。その塩梅は難しいです」と空気感の調整には気を配った。
「例えば、第1回放送では光子が孤独死した部屋が登場するのですが、どこまでゴミ屋敷っぽくするかを美術チームも悩んでいました。ぐちゃぐちゃな部屋にしなければ『孤独死した』という説得力を欠いてしまう。とはいえ、あまりにぐちゃぐちゃすぎると現実味が出て視聴者が引いてしまうリスクがあるため、そのギリギリを狙って調整しました」
続けて、ポップさを演出するための工夫として、「音楽グループ・パスカルズさんが作中の劇判音楽(BGM)を担当しているのですが、パスカルズさんの曲って楽しく聞こえる時もあれば、悲しく聞こえる時もある不思議な魅力があるんです。また、『コメディではなく喜劇にしたい』という狙いもあり、パスカルズさんはおもちゃの楽器やリコーダー、ピアニカなどを楽曲に取り入れていらっしゃり、喜劇的になるのではないかと考えオファーをしました」と話す。
BGM以外の表現方法へのこだわりとして、「鳴海が独り言を話すシーンが多いのですが、ただ、独り言が多いと悲壮感が生まれてしまうため、独り言ではないように見せる必要があり、独り言をポップに見せるために『鏡に映る自分と対話する』という表現方法にしました。
また、イメージシーン(登場人物が頭の中で特定の状況や場面を思い描くシーン)が多いのも特徴かもしれません。やはり『自分は孤独死するかもしれない』と考えた時、誰かと話すより、自分自身に問いかける人の方が多いのではないでしょうか。鳴海が孤独死や終活を考えるシーンでは、イメージで悩みを可視化しつつも、ちょっとふざけて恐怖を和らげる、という調整をしました」
終活や孤独死を鳴海が1人で黙々と考えていたら、視聴しているこちらまで重い気持ちになるため、正直見られたものではないかもしれない。終活や孤独死を考えるシーンで、演出を利かせることは効果的と言える。
コメディではなく喜劇。BGMの重要性
イメージシーンが多いワケ
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