そんなことがあった数日後、真司さんから電話がかかってきました。
「ドキドキしながら出てみると、
なんと例のおばあさんがお店に訪ねてきたそうなんです。軽度の熱中症という診断で、ちょっと脱水気味だったそうですが、その後すぐに家に帰れたみたいで安心しました」
そしてそのおばあさんが、お礼にお菓子を持ってきてくれたそうで、亜弓さんの分もあるので時間のある時に取りにきてくれませんか? という話でした。

イレギュラーに真司さんに会えることが嬉しかった亜弓さん。翌日お店に行ってみると、なんとあのおばあさんが真司さんの施術を受けていて、仕上げの真っ最中でした。
「すると興奮気味の真司さんに『すごい偶然なんだけど、お二人は同姓同名なんですよ』と言われて驚きました。
なんとおばあさんと私は、漢字まで全く一緒の、同じ名前だったんです」
おばあさんに「
あなたに顔を冷やしてもらえた時にすごく気持ち良くて、生き返ったって思ったの」ととても感謝され、お互いの名前の由来話で盛り上がっていると……。
「おばあさんが思い出したようにバッグの中から野球のチケットを2枚取り出して「これいただいたんだけど、うちの家族は誰も行けないって言うから、よかったらどうぞ」と私の手に握らせてくれたんですよ」
そしておばあさんは笑顔で手を振りながら去っていったそう。
「私はそんなに野球に詳しくないのですが、偶然真司さんが好きな球団のチケットだったので、
つい勢いで『一緒に行きます?』と誘ったら、なんとOKだったんですよ」
初めて2人で出かけることができ、よく話してみると真司さんは本当に彼女がいないようでした。
「しかもそれ以来、真司さんが野球に誘ってくれるようになって。私と一緒に観るのが楽しいって言ってくれたんですよね」
そのようにして野球デートを重ねていくうちに2人はお付き合いをするようになったそう。
「あのおばあさんの件から、一気に真司さんとの距離が縮まったので……私は勝手にキューピッド的な存在だと思っているんですよ」と微笑む亜弓さんなのでした。
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<文・イラスト/鈴木詩子>
鈴木詩子
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:
@skippop