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ジュノンボーイGP受賞から19年…36歳俳優が深夜ドラマで見せた“円熟した大人の魅力”

誰もが惚れ惚れする表情

 夕景の砂浜を二人で歩く場面では、美優が「恋人と夫婦って違うのかもね」と言う。ここでも陽介は「え?」と反射的に聞き返してから「うん」と何となく同意する。美優がさらに「初めて会った時も陽介、仕事で遅れてきたの覚えてる?」と嬉しそうに聞くと、意外な質問だったからなのか、陽介は「えへぇっ?」と少し声をふるわせる。  この声色。サンセットビーチの波音と同じくらい綺麗だなぁと惚れ惚れ耳を傾けてしまう。するとインサートカットで後続する回想場面でもっと惚れ惚れするものが……。  遅れてきた陽介が美優の前の席に座る。座った陽介にカメラが寄る。陽介は、ちょっと照れくさそうな表情を浮かべ、美優から視線をずらしながらも、翻って思いきりはにかむ。はい、撮れ高十分。きました、溝端淳平スマイル。誰もが惚れ惚れする表情を回想場面で決めてくれるところ、憎いなぁ。

ジュノンボーイから安定の円熟期へ

 惚れ惚れする表情といえば、近年の溝端出演作だと白石麻衣とSnow Man岩本照共演ドラマ『恋する警護24時』(テレビ朝日系、2024年)でのオーガニックな社長役がよかった。  表情どころか、溝端淳平その人の全身から品よくだだもれる、惚れ惚れ成分がメロいのなんのって。  17歳の高校生だった溝端は、2006年に第19回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで華々しいグランプリを受賞した。  21世紀を代表するジュノンボーイになった彼が現在36歳。大人の魅力を醸すようになったのは確かというか、当然なのだけれど、でも単にそうした雰囲気だけの話ではない。  溝端は演劇界で修行を積んだ。『ムサシ』や『ヴェローナの二紳士』など、巨匠・蜷川幸雄の下でシェイクスピア俳優になった。舞台上でのクリアで力強い発声を鍛えたことによって、俳優の基本である聞き取りやすい口跡や声の魅力をここまで洗練させた努力がある。 「え?」や「うん」といった台詞少なめな『私があなたといる理由』でさえ、音数豊かに響かせられるのは、鍛練に裏打ちされた溝端の表現力が安定の円熟期に入った証拠だろう。 <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修 俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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