そんなある日、社食のメニューにさんま定食を見つけた佑香さんはテンションが上がりました。
「うちの社食のさんまは身がジューシーで皮がパリパリの、知る人ぞ知る秋名物の社内グルメなんです。そしたら佐藤くんもやってきて、私の真似をしてさんま定食を頼んでいたので、また可愛いヤツめと思わずニヤついてしまいました」

せっかくだからと向かい合わせに座り、一緒に食べ始めたのですが……。
「そしたら佐藤くんがいきなりさんまの真ん中に大胆に箸を入れて骨ごと割って、無造作に口に放り込んで、
『美味いですね〜』と笑顔で口に入れた身をいったん出して骨を取って……その指を思いっきりしゃぶったんですよ」
目の前の光景にあっけにとられてしまった佑香さんは、しばらく箸が止まってしまったそう。
「マナーが悪いとかまったく思っていない感じで、どこから注意したらいいのか分からないなって思ってしまったんですよね」
力任せにさんまを食べ進める佐藤くんのお皿は、骨が散らばり皮は半分ずり落ちていました。
「とにかく食べ方が雑で……まだ身のついた部分がたくさん残っているのに、面倒くさいのかごちそうさましていました。そんな佐藤くんの姿を見て“このさんまに申し訳ないし、失礼だって思わないの?”と腹が立ってきてしまって」
しかも、綺麗に食べ終えて魚の標本のように骨だけ残した佑香さんに「
あはは、よっぽどお腹がすいていたんですね」と佐藤くんは言い放ったそう。
「はぁ? と思いました。まるで私が卑しいみたいな言い方をされて、ドキドキしていた気持ちがスーッと冷めていきましたね」