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「めんつゆは手抜き」と言い放つ…超強烈キャラだけど“竹内涼真だから見ていられる”理由

筑前煮は戦意高揚のパワーフード?

 筑前煮は福岡の郷土料理であり、地方ではがめ煮と呼ばれる。1592年、豊臣秀吉治世下の兵士たちが出征前に食べていたらしい。当時は鶏肉ではなくスッポンを使い、滋養と強壮効果がよりパワフルな料理だった。  そうした歴史の背景を踏まえるなら、勝男にとっての筑前煮はただ家庭料理の代表格というより、彼がバリバリ働くための戦意高揚のパワーフード的側面を意味している。  たぶんそんな背景まで知らないと思うが、ホモソーシャルな“男社会”を固く守る彼は遺伝子レベルで筑前煮に反応しているのだと思う。  今さらカビの生えた社会性を堅持されても辟易するだけだが、でも筑前煮パワーを源とする主人公を竹内涼真が演じることで、ちょっとこの人憎めないよなというお茶目さを醸してしまうのが不思議でもある。  決して好感は持てないが、もうこの際好意的に見てやろうと視聴者が半ば諦めるほどなのだ。

竹内涼真のテンポ感で手際よく

 X上の視聴者コメントを読んでみると、さすがの竹内涼真のさわやかさをもってしても海老原勝男役への好感度自体はゼロに等しい。でも彼の生態を徐々にサクサク楽しんで見られてしまうのは、竹内の演技が強烈なキャラをテンポよく運んでいるからだろう。  これがただただねっとり嫌みな感じでじっとり演じられてはたぶん見ていられない。そこで竹内は悪気がないほどすっとんきょうなキャラの空気感を独特の間合いで表現する。後輩から筑前煮を作ってみたらどうかと言われる場面は顕著な一例だ。  勝男には意外な提案だったのだろう。「作る? 俺が 料理?」と思わず自問する。ここで竹内は短い3つのワードそれぞれに合わせて動く。カメラが寄りながら下手から上手へ移動する中、「作る?」と「俺が」で(カメラ)移動方向(上手側)にまず視線を動かしておく。「料理?」で逆方向(下手側)へ翻る。  こうした間合いのテンポ感で手際よく勝男役をリズミカルに躍動させる。竹内涼真の演技だから見ていられる。竹内涼真の演技だから勝男のアップデート物語の爽快な展開が期待できる。 <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修 俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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