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「前が見えなくなる瞬間がたくさんある」38歳俳優が明かす“悔しさ”と40代への想い

 俳優の市原隼人さん(38歳)が、自身が主演を務める人気シリーズの最新作、『おいしい給食 炎の修学旅行』(10月24日(金)公開)に出演。給食マニアの教師・甘利田幸男役を時にコミカルに、時に熱く好演しています。 市原隼人 同作は、給食至上主義の教師と給食マニアの生徒の、どちらが給食をおいしく食べるかというバトルを描く学園グルメコメディーですが、舞台となる80年代の日本に残る道徳心なども魅力と、市原さんは言います。  2019年以来、甘利田幸男を6年に渡って演じ続けてきた本作主演、市原隼人さんにお話を聞きました。

「日本人の道徳心」も描くシリーズ

『おいしい給食 炎の修学旅行』

©︎2023「おいしい給食」製作委員会

――今回の劇場版シリーズ最新作ですが、製作が決まったことを最初に知らされた時はいかがでしたか? 市原隼人(以下、市原):前作のロケで函館に行けたことでさえ奇跡だと思っていたのですが、修学旅行として青森・岩手とまわることができ、また奇跡をいただけたと思いました。今回は給食をテーマにしていながらも、給食以外の食をいただくことになり、青森ではせんべい汁、岩手ではわんこそばと、もう甘利田先生がどんなリアクションをするのだろうと、自分自身早く現場に行って確かめたい思いがあふれていました。 特に今回は宿泊するということで、バスに乗って、卓球をしたり、温泉に入ったり、また新たな夢を見させていただきました。シリーズが続けられることは、応援してくださるみなさまのお気持ちのたまものですので、新たな作品を撮らせていただくにあたって、お客様にお楽しみいただけるように、さらに奮闘しなければならないという想いで撮影に臨みました。 ――演じる甘利田は給食絶対主義の教師として人気だと思いますが、これだけシリーズを重ねられた今、どのように受け止めていますか? 市原:2019年から6年間シリーズが続いていますが、最初からコンセプトは変わらないんです。滑稽な姿を見せても笑われても、恥ずかしい思いをしても、好きなものは好きと胸を張って謳歌している人。そんな甘利田の日々を、ぜひ多くの方々の活力としていただきたいです。また舞台が1980年代から始まっていて、今、日本人が忘れかけている古き良き日本のわびさびが入っていますので、日本人の道徳心も描いています。 表面的にはコメディーなので小さなお子様から人生のキャリアを積まれた方、すべての方に楽しんでいただけるエンターテイメントなのですが、その中には地に足の着いた、しっかりとした社会派としてのメッセージがたくさん込められていますので、その想いをしっかりと届けたいと思っています。

「人を選ばず、大切なことを訴え続ける人」にあこがれるように

市原隼人――今回の撮影で特に印象に残ったシーンやエピソードは何でしょうか? 市原:これまでは給食だったので火を使うことがなかったのですが、青森でアツアツのせんべい汁をいただく際、これはどんなリアクションになるのだろうと、斬新な世界に入ったなと思いました(笑)。それと、お店の方が提供して初めて成立する、わんこそばも出てきます。今までのように自分だけで食するのではなく、誰かが提供して成り立つものが新たな要素でしたので、撮影していて楽しかったです。 わんこそばのシーンは、実際にお店で働かれている方々が出演してくださったのですが、撮影が終わってからも生徒役の子どもたちにわんこそばを提供してくれたそうなんです。 撮影外でわたしがいないところでも、子どもたちが思い切り楽しんでいたみたいで、目に入る撮影過程から目に映らないところまで、すべてが愛にあふれている現場なんです。「おいしい給食」らしく、その中心は食にあり、つねに人道的な人間愛にあふれた、唯一無二の撮影現場だなと思いました。 ――長いこと甘利田を演じられていますが、彼に教えられたことは? 市原:シーズンを重ねるごとに自分自身も歳を重ねているわけですが、わたしもその間、違う作品を重ねるごとに、「おいしい給食」を求めるようになりました。舞台が1984年のシーズン1から始まり、今回90年代に入っていくのですが、我々が持っていなければいけない心というものが、常に「おいしい給食」の中にはある。 社会や人と向き合う時、本質的なものに向き合わないといけないが、もしかしたら僕たちは避けていることがあるのかもしれないなと。たとえば今はSNSなどがあり、顔を突き合わせることなくいろいろな物事が作られていくなかで、甘利田先生のあの顔の近さ(笑)。僕自身があれを求めるようになりました。 現代社会だからこそ、そうでなければならないんだと。甘利田のように人を選ばず、大切なことを訴え続けていける人にあこがれるようになりました。
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40代、50代も悔しがっていたい
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