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「今年の話題作に全部出てる」“世間を騒がせた24歳女優”が見せた、化け物級の演技力。移籍騒動を乗り越えて

 公開から5カ月が経過した今でも、全国の映画館で上映が続いている『国宝』。実写邦画歴代興行収入1位の『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(173.5億円)に迫る、11月3日時点で168.7億円(興行通信社調べ)を記録するなど、近年屈指の話題作と言える。
映画『国宝』

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

 また、『カルテット』(TBS系)や『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系)でもタッグを組んだ、主演・松たか子×脚本・坂元裕二という完璧な布陣で制作された今年2月公開の映画『ファーストキス 1ST KISS』も話題を呼んだ。  さらには、10月10日から公開中の新海誠原作の実写映画『秒速5センチメートル』も好調だ。人気アニメの実写化に拒否反応を示す人は一定数おり、苦戦を強いられるのかと思いきや、10月24日~10月30日の週間映画ランキング(興行通信社調べ)でも2位にランクイン。公開から時間が経っているにもかかわらず、上位をキープしている。 『国宝』を筆頭に、今年は邦画の注目作が多かったが、上記3作品すべてに出演している役者がいる。それが森七菜(24)だ。

主演の松たか子にも負けない佇まい

『ファーストキス 1ST KISS』

『ファーストキス 1ST KISS』DVD 通常版(東宝)

 まず、映画『ファーストキス 1ST KISS』では、主人公・硯カンナ(松)のサバサバした性格の同僚・世木杏里(森)を演じた。『カルテット』や『大豆田とわ子と三人の元夫』同様、本作でも松は“坂元裕二節”を披露するが、森がその世界観に飲み込まれることはない。杏里はカンナの話を聞き、淡々と、しかしつっけんどんにはならずにアドバイスをする。カンナがついつい本音を話したくなるのも頷けるほど、堂々とした佇まいを見せていた。  そして、杏里との本心をさらけ出したやり取りを通して、「どういう思考回路をしているのか?」など、カンナというキャラクターの輪郭が浮かび上がってくる。ピッチャーの個性をうまく引き出す名キャッチャーのように、森の“受け”が光っていたからこそ、作品の見やすさがグッと押し上がっていた。

わずかな登場時間で化け物級の演技力

 映画『国宝』では、歌舞伎役者・吾妻千五郎(中村鴈治郎)の娘で、主人公・立花喜久雄(吉沢亮)に思いを寄せる彰子を演じた。喜久雄の才能を見出した二代目・花井半二郎(渡辺謙)が亡くなり、孤立していた喜久雄は、彰子の“血”を利用するために関係を持つ。しかし、千五郎の思惑に怒り心頭。喜久雄に詰め寄るが、彰子は吾妻家ではなく喜久雄を選ぶ。その後、地方回りをこなす日々を送るが、生活もままならず、すっかり落ちぶれてしまった喜久雄に愛想を尽かして彰子は姿を消した。
 登場当初は、かなりキャピキャピした若者だった彰子。ただ、喜久雄とのどさ回りを通して、徐々に地に足の着いた大人の女性へと成長を見せ、あれほど胸をキュンキュンいわせていた喜久雄に厳しい態度をとるようになる。  彰子はあくまでサブキャラで、登場時間も長くはない。それでも、喜久雄とはまた別の形で、歌舞伎という異色すぎる世界によって人生を狂わされた1人として存在感を発揮。また、喜久雄とのベッドシーンもあり、作品をより妖艶に、より生々しく彩っていた。少女だけではなく大人の顔も見せ、わずかな登場時間で大きなインパクトを与えた森の演技力は、“化け物級”と言える。
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ありがちなキャラに“人間味”を滲ませる
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