――ところで、この本には「ケア」という言葉はあまり出てこないですね。
終電:使わないように意識したところはあります。「ケア」という言葉はよく使われるようになりましたけど、その文脈が変化していって、「セルフケアをすべき」、「自分の機嫌は自分で取れ」という、自己責任的というか、あまりよくない方向にいっている気がするんです。
――ただし絶対に終電を逃さない女さんご自身は、セルフケア的なことを実践されています。
終電:そうです。私は結果的にセルフケアができちゃってるというか、努力によってそれを獲得できたと思っています。だからこそ、努力を人に強いることはしたくないんですよね。それに、「どうしてもセルフケアができない人」がいることも見てきたので、そんなに簡単なものじゃない。だから「絶対に終電を逃さない女はセルフケアできているから、それを推奨している」と読まれたくないと思って、この本ではあえて使わないように意識しました。
――社会に浸透するにつれて、言葉の意味が広がって変わってしまうことってありますよね。「虚弱」もそうなる可能性があるという危惧はありますか?
終電:そうなる可能性もあるでしょうね。でも、それはある意味で社会に浸透したということ。ずっと「見えない存在」でいるより、ずっとマシなんじゃないかと思っています。
<取材・文/藤谷千明 撮影/山川修一>
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