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散らかす・忘れる・すぐキレる…夫の謎行動に悩んだ妻が、やっとたどりついた対処法とは <漫画>

「やりっぱなし、忘れる」の理由と対処法

 昨日食べたもの、食器、服、すべて出しっぱなし。家のカギも差しっぱなし。さらに、物の場所を忘れて常に探している状態。  特性を持つ翔太の場合、これらはすべて日常。それがADHDなのです。なぜ?と思ってしまいますが、そこは脳の仕組みのせい。ブル先生いわく<ADHDのワーキングメモリーはカーリング思考>。  通常のワーキングメモリーは<今ある情報と共に順次処理される>、いわば<ベルトコンベア型>。ADHDはワーキングメモリーが通常より少なく、<今ある情報が新しい情報によって押し出される>、つまりひとつの情報が入るともともとあった情報が押し出されてしまうという<カーリング型>です。  これは脳の特性なので、本人の努力ではどうにもならないといいます。だからといって、妻の結衣がいちいち夫の翔太に付き合っていたらストレスで押しつぶされてしまいます。  対策としては<境界線を決める>。余裕がある時は夫を手伝う、余裕がない時はしっかり断る。ここをはっきりさせて、相手に任せてしまうことです。  そうすることで、妻側の結衣は心の平穏を、夫側の翔太は自力でやろうという気持ちを、それぞれ持てるからです。

「想定外のことがあるとキレる」理由とは

 外出する提案をしてきたのに、少しでも想定外の出来事があるとキレる。でも遠出となると渋滞などの時間のズレや、計画通りにいかないのはめずらしくありません。  一般的に<脳の機能は連携し、情報同士が紐付けされた状態>。しかしADHDは<脳の連携が苦手で、情報はバラバラに飛んでいる状態>。ハプニングが起こった際、自然と別の方法を探すのが一般的な思考ですが、ADHDの場合は、「遅れそう」など一点しか見えなくなってしまいます。他の行動が考えられず絶望や思考停止によって、キレるという結果になるのでしょう。  裏を返せば、計画通りに進めようと真摯に頑張っているとも受け取れます。その気持ちを汲み取り、妻の結衣から<計画通りにできなくても違う方法がある>というのを、さりげなく示す方法もあります。  妻がすべてを背負い込むのでなく、脳の特性を踏まえた上で選択肢を提示するだけでいいというスタンスで描かれています。

妻も夫も、一生懸命に生きている

 本書の後半で、結衣は自助会に参加します。同じ悩みを持つ者同士が語り合う場です。「離婚」という言葉が浮かんでいた結衣は、ひとりの女性に出会います。結衣と同じ立場で、<星の数ほど離婚を考えた>という女性です。  なぜ離婚しなかったのか、という問いに、その人が言ったことにハッとし、結衣も夫と向き合うことになります。  結衣の対応に応じて、翔太も変わっていきます。ADHDと向き合う決心をするのです。本書には、ADHDの生きづらさを肯定し、共生していくための具体策が詰まっています。 <文/森美樹>
森美樹
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx
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