
画像:TVerより
『ちょっとだけエスパー』(テレビ朝日系)も、野木亜紀子氏の“構成力”に唸らされました。完全オリジナル脚本で描かれた本作は、すべてを失った文太(大泉洋)が、“ちょっとだけエスパー”となり仲間たちと世界を救うミッションに巻き込まれていきました。
また文太は、謎の女性・四季(宮﨑あおい)と仮初めの夫婦として暮らすよう命じられ、日常の延長にある“違和感”が少しずつ積み上がっていきます。
仕掛けを埋め、回収して震わせる圧倒的な野木式「構成力」
物語の前半と後半でこんなにも物語のテイストが変わった作品も珍しい。前半は“ちょっとだけエスパー”を使いながら、何やら誰かを救っていそう……という不思議ながらもコミカルな展開でした。
しかし四季には「本当の夫」が存在し、その正体が文太のボス・兆=文人(岡田将生)だと判明する前後から、サスペンス色が一気に加速。「もしもあのとき(分岐点)で、別の道を選んでいたら」という問いを通して、後悔する生き物である人間の生き様を壮大なストーリーで魅せてくれました。
主人公は第1話で「人を愛してはいけない」というルールを課されますが、それが選択と関係性を縛る装置として機能し、各話で繰り広げられる出来事を必然へ変えていきます。仮初めの夫と本当の(未来の)夫、ふたつの人生の可能性を並べながら、選ばなかった道ごと救い上げていく構成の美しさは圧倒的。
伏線の置き方と回収もロジカルで、終盤に向けて散りばめられていたピースが一つに収束していく快感も野木作品らしい展開でした。「生きていることで未来が変わり、世界を救うことへとつながる」と感じさせる希望あるラストも印象的でした。