4)SNSに頼る
地震が起こると、すぐスマホを手に取り、SNSで何が起きたのか確認する——という方は多いのではないでしょうか。
でも、「揺れた瞬間に真っ先にスマホで状況確認をするのは×」と辻さん。先ほどもあったように、周囲を確認して安全を確保するのが最初のアクション。情報収集は“その後”の話です。
「被災生活をサバイブするには情報は必要で、SNSも役に立ちます。でも、流れてくる情報はあなたに必要なものとは限らないし、真実でない可能性もあります。すぐに鵜呑みにしたり、リポストしたりするのは避けましょう。普段から信頼できる情報源をフォローしておくことをおすすめします」
情報の真偽を確かめる習慣をつけるなど、SNSとの付き合い方も日頃からのトレーニングが必要なのかもしれません。
5)すぐに帰りたがる
勤務先や外出先で被災すると、「どう家に帰るか」を考えるもの。しかし辻さんは、「気持ちはわかるけれど、安易に帰ってはいけません」と言います。
歩いて帰っても大丈夫な目安は「平時で徒歩30分圏内の距離」。それ以上であれば、会社に留まるか、外出先近くの避難所に身を寄せるのが無難です。
「大地震のあとの道は、がれきで荒れていたり、街灯が消えて真っ暗だったりして、安全に通行できる状態ではありません。普段30分で帰れる距離でも、2時間はかかります。家が心配なのは当然ですが、ここでもいちばんに考えるべきは『身の安全』です」

大阪北部地震では神社の鳥居が倒れた
6)閉じ込められたときに大声を出す
「倒壊した家屋やがれきに閉じ込められると、恐怖で焦り、大声で助けを呼びたくなります。でも、叫び続けるとのどを傷め、体力を消耗するばかり。声を出すのは人の気配を感じたときです」
SOSを発するにも、効率的な方法があります。
「傘などの金属製のもので周囲の壁を叩いてください。この音のほうが人の声よりも探索機に反応しやすく、気づいてもらいやすいのです。ただし、このときも闇雲に叩き続けるのではなく、30分に1回程度の頻度で。体力を温存します」

レスキューナースの辻直美さん。自身も3回の被災経験がある
7)地下からは一刻も早く脱出
地下街や地下鉄で地震に遭うと、閉じ込められるのでは、倒壊するのではと不安になりますよね。しかし、だからといって焦って非常階段へ向かうのはNG。むしろ二次災害を招きかねません。
「いちばん危険なのは、人が殺到して群衆雪崩が起きることです。係員の指示に従い、焦らず行動しましょう。『みんなが行くから』と周りの人についていくのも危険です。人の判断に乗るのではなく、状況を見て自分で判断しましょう」
7つのNG行動を教えていただきましたが、では地震発生後、どう行動すればよいのでしょうか。
「津波のリスクがある場合は、揺れが収まり次第すぐに避難します。そうでなければ、家の中と外の状況を確認し、倒壊の危険がなければ在宅避難を選択します」
家にとどまることが不安であれば、避難所へ向かっても構いません。防災リュックを持って避難します。
「迷うこともあると思いますが、判断基準はどんなときでも『身の安全』です。命を最優先に行動を選択してください」
【辻 直美さん】
国際災害レスキューナース
国境なき医師団の活動で上海に赴任し、医療支援を実施。帰国後、看護師として活動中に阪神・淡路大震災を経験。その後、赴任先の聖路加国際病院で地下鉄サリン事件の対応に従事し、災害医療の道へ。看護師歴35年、災害レスキューナースとしては31年活動し、被災地派遣は国内外合わせて30か所以上。2016年にはレスキューに入った熊本地震で本震を経験。2018年には大阪府北部地震で自宅が震度6弱の揺れに見舞われるも、100円グッズのアイテムを中心とした対策で家も自身も無傷だった。現在はフリーランスの看護師として、要請があれば被災地で活動を行うほか、防災教育にも注力。
<取材・文/鈴木靖子 撮影/林紘輝・星 亘 写真提供/辻 直美>