――婚活を始めたきっかけは何だったのでしょうか。
中川学さん(以下、中川):29歳の時に「くも膜下出血」を発症したことなど、自分の経験を漫画に描いてきたのですが、それを読んでくれた編集者さんから「次は婚活はどうですか」と言われたんです。
僕も結婚を諦めていたわけではなかったのですが、元々コミュニケーションが苦手だったからなんとなく踏み出せませんでした。でも、提案してもらったことで、「ちょうどいい機会だな」と思ってやってみることにしました。
――婚活の場では、ご自身が「漫画家」であることを明かしていましたか?
中川:はい。意外にも反応は好印象というか、喜んでもらえるんだなと僕は捉えてました。「婚活を漫画にしている」と伝えても、それほど引かれた記憶はありません。
婚活をネタにしている以上、「この人とは関わりたくない」と女性に引かれるリスクは覚悟していました。ただ、そうしたマイナス面だけでなく、僕の赤裸々な記録を読んで「これなら自分も婚活を頑張れるかも」と勇気を持ってくれる人がいるかもしれない、とも思っていたんです。
――実際の読者の反応はいかがでしたか?
中川:男性からは応援の声も多く、僕と同じ年くらいの人が「婚活を頑張ろうと思いました」と言ってくれたり。「自分よりもヤバいやつがいてホッとした」という声もありましたが、僕としては嬉しかったですね。
一方で、女性からは……辛すぎて記憶が曖昧なのですが、、「キモい」「こいつはないわ」と辛辣な声が9割でした。序盤、コロナウイルスの後遺症により一時的に性欲を失い、回復後に「このまま独りなのは怖い」と怯える姿を描いたのですが、そこが気持ち悪すぎたんだと思います。だから、今日のインタビューも、女性から「あの内容はなんだ!」と糾弾されるんじゃないかとビクビクしていました……。
――婚活漫画では、あえて描かなかった部分もあるのでしょうか。
中川:セックスに関することは、一切描かないと決めていました。本当はそこまで踏み込みたかったんです。構想を練っていると「これ、セックスのことまで描いたら、もはや文学になっちゃうかも」と思いました(笑)。史上初めて、漫画が芥川賞を受賞してしまうかもしれないと(笑)。
でも、そういう関係になったお相手に、漫画に描いてもいいか尋ねたところ、「お前は何を考えているんだ」と当然断られたのでやめました。
――実在の人物を描く際、どのような配慮をされましたか?
中川:出来事は忠実に描きますが、お相手のプロフィールや容姿は、誰だかわからないように絶妙に変えています。お笑い芸人なら劇団員に置き換えたり、タレ目が特徴の人なら、そのニュアンスだけを残して他を変えたりといった感じです。
――本作では、中川さんが「容姿が好みではなかった」と感じたとき、お相手の姿を描かないようにしていたのが印象的でした。
中川:そこはすごく考えました。「好みではなかった」と僕が言っている以上、お相手の特徴を変えて描いたとしても、今度はその変えた顔に似ている人がどう感じるのか。それを考えると、容姿を描くことはできなかったです。
今までエッセイ漫画では、ずっと自虐的なことばかり描いていたのですが、今回は相手もいることだからすごく躊躇しました。婚活で出会った女性のことをどう描いたらいいのか、最初はすごく迷いましたね。