何度タイムトラベルを繰り返しても、29歳の駈はカンナを好きになってしまう。松村さんがひょうひょうと、しかし真摯に想いを伝えるので、そのピュアさに胸を打たれてしまいます。また、専門的な話をまくしたてるオタク気質な一面も、ナチュラルに醸し出されていました。

画像:映画『ファーストキス 1ST KISS』公式サイトより
下手をすれば、朴訥で純粋な駈はファンタジーの中の人物に見えてしまう。それを、等身大で飾らない松村さんが演じることで、現実のリアリティを持って提示してくれるのです。
スーパースターなはずなのに、観客に「本当にそこにいる」という安心感を与えてくれる。丁寧に言葉を紡ぐ松村さんの優しい声色がそうさせているのかもしれません。
また、駈の悲劇的な未来をカンナが変えようとしますが、彼は当然のようにある選択をします。これが本当に「らしいな」と思ってしまう。駈に松村さんが憑依しているので、「松村北斗らしいな」とも「駈らしいな」とも思える説得力があります。
同時に松村北斗にときめいているのか、駈にときめいているのか分からなくなる。異なる作品では全く違う人物を演じ分けていても、毎回その人物が本当に存在するかのように見えてしまうため、どれが本当の松村さんなのかと困惑するほどです。
昨年10月には、優秀主演男優賞を受賞した『秒速5センチメートル』(東宝)が公開されました。松村さんは主人公・遠野貴樹役で、高畑充希さんがヒロイン・篠原明里を演じています。
今作の原作者であり、松村さんが重要人物を演じた2022年のアニメーション映画『すずめの戸締まり』の新海誠監督は、「もっとも信頼する俳優」と松村さんを評しています。『ファーストキス』の豪華な制作陣を見てもそうですが、今松村さんが映像作品界で一つ抜けたホットな存在であることが分かります。