「親に育てられていないから育て方がわからない」というお母さんも

ひとり親は、どうしても精神的にも孤立する傾向にあり、そういった視点での支援も行っているそうだ。そんな中で、寄り添うことの難しさを実感することも多いという。
「支援に来ている方で、『児童養護施設で育ち、親に育てられたことがないからどのように子育てをしたら良いかわからない』と言っているママさんがいました。その後、旦那さんと別れて、次のパートナーと再婚して、また子どもができるけど、結局愛情の与え方がわからないと。施設で育っているために、誰かに気に入られないと生きていけなくて、愛情をもらうとはまた別の感覚で生きてきたんです。
結局そのママは、次のパートナーとも別れて、子どもを家に置いて夜飲みにでていたり。別のケースでは、子どもと2人で支援にきていた親子がしばらくして来なくなり、しばらく経ってからまたきた時に、『彼氏と一緒になって子どもは児童相談所に預けました』と報告を受けたことがあります。その時はショックでした。自分だけの幸せのために子どもを捨てたんだと。
もちろん母親本人も幼少期から抱えていた苦しみを乗り越えようと必死だったのだとは思います。だからこそ、もっとどうにかできなかったのかな、あの子は今どうしているのだろうかと、いまだに悔やむ気持ちがあります」
もちろん支援の範疇では、各家庭に深く介入はできない。でも深掘りはできなくても、その人たちと仲良くなり、自分自身もシングルマザーとして苦労してきた当事者目線を生かして、悩む母たちの心を開示してもらうことはできる。
そうして心理カウンセラーなどの専門家と連携をとり、相談窓口に繋げる支援も行っているという。
「今の子たちは特に、知らない人に自分の心を開くハードルが高いと感じます。その中で、子育て世帯の悩みはさまざまで、役所に相談に行っても、どこの課に行っていいのか分からず、たらい回しにされて心が折れたというケースもよく耳にします。
また、行政の政策、子育て支援に対する情報を得る手段が行き届いていないと実感もしますし、同じ人に信頼して安心して相談できるサービスなどもまだまだ充実していないように思います。淡々とした解決じゃなくて、ただ寄り添って欲しい人も多いので、少しでもそういう存在になれたらと思っています」

若林さんの活動を通して、最初はどん底からスタートしたものの、少しずつ自立の道を経て、今度は自分が助ける側に回ろうと、支援のボランティア側に回るケースもあるという。
「苦しい状況というのは結局、支援物資やお金では解決できないと思うんです。いかに視点を切り替えて、人を大切にすることで、自分にそれが全部帰ってくるということに気づけるか? だと思います。
私も離婚するまでの依存していた時の幸せと、自立できた今の幸せは比べものにならないですし、自立するまでには5年はかかりました。最初はクリアしなければいけない課題が膨大な数ありますが、それを一気にクリアしようじゃなくて、一つずつ時間をかけて継続して、解決していくしかない。
自立は、まず自分の中に何が無駄か? を見直すところからスタートして、余計なものは背負わない。そこから見直し始めることが第一歩だと思いますし、最初はシングルであることに引け目を感じたりするかもしれませんが、自分の頑張り次第で、いくらでも後々巻き返せることはできますから」
ひとり親や、経済的に余裕がないと、どうしても子どもを幸せにできないかもとプレッシャーに感じる人もいるかもしれない。だが若林さんは、「親が幸せじゃないと、子どもは幸せになれない」と強く語ってくれた。
幸せとは物質的なものではなく、親子が互いに笑顔でいれる心の余裕なのだ。自分だけでなく、誰かを幸せにできる優しさや温かさは、意外と身近にある。その尊さを、若林さんはこれからも活動を通して伝えていってくれるだろう。
<取材・文/SALLiA>
SALLiA
歌手・音楽家・仏像オタクニスト・ライター。「イデア」でUSEN1位を獲得。初著『生きるのが苦しいなら』(キラジェンヌ株式)は紀伊國屋総合ランキング3位を獲得。日刊ゲンダイ、日刊SPA!などで執筆も行い、自身もタレントとして幅広く活動している