――ノルウェーでは最初、吹奏楽の先生をしていたそうですね。そのきっかけは?
ノルウェーの憲法記念日に行なわれる、国民総出のパレードですね。そこでものすごい数の吹奏楽団を見て、「ノルウェーでなら吹奏楽の先生になれるかも」って思ったんです。もともと日本で音楽の教員になったのも、吹奏楽部の顧問をやりたかったからですが、私が配属された学校には吹奏楽部がなかった。ノルウェーでその夢をかなえられるかもと思ったんです。
――憲法記念日のパレードは、どんな感じなんですか?
「ノルウェーにこんなに人がいたんだ!」っていうくらいの人出です(笑)。しかも、老若男女が伝統衣装を着るので、国民総出のコスプレパーティみたいでおもしろいですよ。男性はスーツの人もいますが、女性はほとんど伝統衣装を着てます。みんな14歳で衣装をつくるらしく、それを着るんですね。
――ちなみに、仕事はすぐに見つかったんですか?
英語やノルウェー語で音楽を教えたことがなかったので、大変でした。まずは、ノルウェーの求人サイトから履歴書を送りまくって、面接では「『タッタタタ~』じゃなくて『タッタラタ~』です」みたいに、英語ではなく歌でなんとかニュアンスを伝えていました(笑)。そのうち、トロンボーンのインストラクターの仕事がなんとか決まりました。一つ決まって経歴ができると、それ以外の仕事への門戸も開き、代理の先生や指揮者などの仕事ができるようになりましたね。
――生徒を指導するなかで、日本との違いは感じましたか?
日本は基礎を大切にしますよね。サッカーなら、まずはパスやシュートを練習して、試合は最後の1時間だけ、みたいな。吹奏楽でも、最初に基礎練習をじっくりしてから、曲を演奏します。でもノルウェーでは、子どもでも大人でも、ウオーミングアップは15分くらいで、「はい、じゃ曲やりまーす」っていうスピード感なんです。最初はかなり驚きました。
――実践重視なんですね! 生徒の雰囲気も違いますか?
全然違います。「日本の縦割りってすごいんだなぁ」って思ったことがありますね。私は以前ノルウェーの小学生を教えていたのですが、教室に先生がいないと練習ははじまりません。
でも、一度ノルウェー人の同僚と日本の小学校の吹奏楽部を訪ねたとき、教室に先生がいなくても、6年生が前に出て「はい、1、2、3、4!」って練習をはじめて、めちゃくちゃびっくりしました。生徒間でも縦割り構造があるからできることだと思いますが、ノルウェー、少なくとも私のクラスでは無理ですね。子どもたちにヒエラルキーが全然ないので、リーダーも決まりません。先生がいなければ崩壊なんです(笑)。