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スマホやAIの便利さと引き換えに手放した旅の余白 元テレ朝アナ・旅行会社CEOがつづる

スマホのない時代の「旅中」の思い出

 次に、「旅中」について考えてみたいと思います。  スマホが普及する前、海外で携帯電話を使うことはほとんどありませんでした。当時はWi-Fiもなく、海外で携帯電話を使うとなると恐ろしい額の「パケット代」が請求される時代。だから海外に着いたら携帯電話の電源は切ったまま、という人も少なくありませんでした。  旅の最中に頼りになるのは、ガイドブックの巻末についている小さな地図だけ。紙の地図を広げながら街を歩き回るのが当たり前でした。  そんなスマホのない時代にパリに行ったことがあります。石畳の道が入り組んだ旧市街を歩いているうちに、完全に道に迷ってしまったのです。今なら地図アプリを開けば数秒で解決するようなことですが、当時はそうはいきません。  そこで思い切って地元の人に道を尋ねました。  すると、その方は親切に道を教えてくれただけでなく、「そこは観光客向けのお店だから、こっちのお店のほうがいいよ」と別のレストランを紹介してくれたのです。  母との二人旅だったのですが、実際に行ってみると地元の人たちで賑わう素敵なレストランでした。料理もおいしく、雰囲気も抜群。今でも印象に残っている旅の思い出のひとつです。予定調和ではない出会い。迷った先の出会いもあるんだなと、その時感じたのを覚えています。  今はスマホで検索すれば、行きたいお店まで最短ルートでたどり着けます。それは間違いなく便利なことですが、一方でこうした偶然の出会いは少なくなってしまったのかもしれません。

不便さゆえの苦い思い出も

大木優紀さん ただ、もちろん不便さゆえの苦い思い出もあります。  チェコを旅した際、プラハから「世界一美しい街」とも称されるチェスキー・クルムロフを目指したことがありました。  ところが、バスと電車の乗り継ぎ情報がうまく把握できず、移動に失敗。結局その日は目的地までたどり着くことができませんでした。もし今だったら、スマホでルートを検索し、リアルタイムで運行状況を確認しながら移動できたはずです。  迷った先に素敵な出会いが待っていることもある。でも、行きたい場所に確実に行ける安心感もまた大切です。そう考えると、旅中におけるスマホの恩恵は計り知れません。ただ、その便利さと引き換えに、少しだけ偶然の余白を手放したのかもしれない。そんなことを感じます。
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移動は便利に、スマホが取り払った「言葉の壁」
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