作業は広い冷蔵機能のある倉庫の作業場で、ジャガイモの検品と袋詰め、トマトのパック詰めなどの作業でした。ジャガイモの検品は、まず段ボール箱に入っている大量のジャガイモの芽をひたすら剝く&見た目が悪いものを弾く作業です。

現場に管理者や他のスタッフはおらず、体力も頭も使う作業でないので、自然と件の男性と会話をする流れになりました。本来はタイミーという身分をわきまえて黙々と作業をすべきなのでしょうが、ウルトラライトダウンを着ている私からしたら現場はかじかむような寒さ。
現代の東京での高級ダウン不要論を常々唱えている身ですが、彼の着ているカナダグースが心から羨ましくてたまりません。黙っていたらそのまま凍りついてしまいそうなので、会話で気分を紛らわせてでもいなければ、やってられません。
「寒いですね」と私が彼に言うと、適当な相槌と共に「この現場は初めてですか?」と返ってきました。タイミー同士の初対面の会話は、大体これから始まります。
「初めてです」
「僕もです。ここは会社が近かったので申し込んだんですよ。他の現場にも入られているんですか?」
「ああ、ちょこちょこと」
「なにか面白いところないですかね?」
「最近は総菜バイトにハマっていますね。あと、パン工場とか」
「パン工場、僕はムリでしたね。そういえばこの前、花見のキッチンカーで募集があったんですよ、普段なかなかできない体験で――」
……そんな他愛もない会話の中で、言葉の端々からわかったのは、どうやら彼は正業があり、タイミーは完全に副業であること、その正業は何かしらの自営業であることでした。

そして、仕事を選ぶ基準は時給や勤務地より「おもしろさ」と社会勉強性を優先していることです。収入を得る手段としてではなく、道楽としてやっている、いわばエンジョイ勢。でなければ、時給も低く短時間作業、しかも緊急募集などで来るはずありません。
こうやって記事のネタにしている私自身も人のことは言えませんが、色々な人がいるのだと目からウロコでした。そんなこんなで作業をしていたら、2時間はすぐすぎていきました。正直、働いた気がせず、個人的には不完全燃焼の現場でした。