――作中にはさまざまな相談者が登場します。初期に軸となる3人、50代童貞の目黒さん、美人アラフォー大塚さん、需要はあるが結婚できない高輪さんはどのように生まれたのでしょうか。
井原タクヤ先生(以下、井原):まずは作品の世界観や読み味を知ってもらうことを優先していました。そのため、恋愛や婚活でつまずきやすい典型的なタイプを、少し極端にデフォルメした人物として、この3人を描いています。読者からすると、「自分とは違う人だ」と少し距離を置いて読める存在にしたかったんです。
一つひとつの悩みを見れば、「これ、自分にも当てはまるかも」と思える部分はあると思います。でも、人物像全体としては少し極端にしてあるので、最初は安心して読めるようにと。

『運命など存在しないので』3巻 第17話より
――「自分そのもの」なキャラクターだと、読むのが辛くなってしまうから?
井原:そうです(笑)。いきなり痛いところを指摘されたらしんどいですからね。まずは他人事として読んでもらって、読み進めるうちに「実は自分にもこういう思考の癖があるかもしれない」と感じてもらえたらいいなと思っています。
――具体的にはどのように落とし込んでいったのでしょうか。
井原:「婚活ではこういう失敗がありそうだな」という事例から考えていきました。最初に“やらかし”や課題があって、それをしそうな人物像を組み合わせていく。いくつかの要素を寄せ集めて、一人のキャラクターになったイメージですね。特に目黒さんと大塚さんは、婚活で特に議論になりやすいテーマを描くために設定したキャラクターです。
――まず、年収1千万イケメン年下男性を希望する、大塚さんについて教えてください。
井原:マッチングアプリでの成功体験から、「年下のイケメンや高収入の男性とも十分釣り合う」と思い込んだまま結婚相談所へ来るケースです。マッチングアプリと結婚相談所の違いを説明する役割を担ってもらいました。
同じ婚活サービスでも、これらは仕組みも目的も大きく違います。結婚相談所は費用も高く、利用するハードルも決して低くありません。だからこそ、「なぜマッチングアプリではなく、結婚相談所を利用するのか」という特徴は、序盤でしっかり伝えておきたいと思いました。
――最初は20代の可愛い子を希望する、52歳・目黒さんはいかがでしょう。
井原:希望相手の問題以外にも、中高年ならではの婚活を描くためのキャラクターです。

『運命など存在しないので』3巻 第23話より
20代、30代とは違って、中高年は老後や親の介護など、考えなければいけない現実が増えてきます。それは婚活だけではなく、その年代の人生そのものに関わるテーマでもあります。結婚したい理由も若い世代とは変わってきますし、その年代ならではの悩みを描く存在として、目黒さんには大きな役割を担ってもらっています。