――高輪さんは「人気があるのに、自信が持てない」というタイプですね。
井原:大塚さん、目黒さんのクセが強い分、高輪さんは「応援できる存在」として描きました。また、高輪さんは、結婚相談所ならではの「仮交際」という仕組みを描くために生まれたキャラクターでもあります。

『運命など存在しないので』2巻 第14話より
仮交際は、お見合いのあと「もう少し会ってみたい」と思った相手と進む段階ですが、基本的には複数人と同時並行で進めることができます。普通の恋愛ではあまり経験しない状況なので、最初は戸惑う方も多いんです。特に若くて人気のある人ほど申し込みが多い反面、「誰を選べばいいのか分からない」という状態に陥りやすい。
高輪さんも、「付き合いたいと思える人がいない」と悩みますが、柏木から「恋人を決める段階ではなく、もう少し話してみる相手を選ぶ段階」と説明されることで、少しずつ考え方が変わっていきます。選択肢が多いからこそ決められない――そんな婚活ならではのジレンマを描きたかったんです。
――最後に読者へのメッセージをお願いします。
井原:婚活を題材にした作品ではありますが、普遍的なテーマを描いていきたいと思っています。誰かと関係を築くことや、自分の人生をどう選んでいくか――結婚相談所を舞台にしているからこそ、仕事に対する哲学や、何を大切にしているのか、といった部分も掘り下げていきたいですね。

『運命など存在しないので』4巻(講談社)
婚活は、正解が分からないまま人生を左右する選択をしなければならないからこそ、とても苦しいものです。でも、それは就職や進学など、人生のさまざまな場面にも共通しています。
迷ったり、自分の良さが分からなくなったりするのは当たり前のこと。だからこそ、自分が本当は何を望んでいるのか――その問いだけは忘れずに持ち続けてほしい。その問いを重ねながら選択していけば、自分が望む生き方に少しずつ近づいていける。私は、そう信じています。
<取材・文/新庄圭>
新庄圭
しんじょう・けい/フリーランス編集者・ライター。アニメ雑誌やアニメ関連ムックを中心に編集・ライティングを担当。作品や作り手の魅力をわかりやすく伝える記事づくりを心掛けている。