試用期間にコキ使われて突然クビ!そんなのアリ?
低賃金・長時間労働・パワハラや暴力……。すっかり日本社会で名前が定着した「ブラック企業」だが、いまや中小だけでなく大手企業も「ブラック化」する傾向にあるらしい。労働者が告発する、内部事情とは?

【医療機器メーカー】
年収:不明(35歳)/勤続年数:3か月
部署名:試用期間中/総社員数:約100人
「8月に転職した職場で、3か月の試用期間の最終月に突然、上司から『今月で辞めろ』と不当な解雇を言い渡されました。理由は教えてもらっていません」と、納得がいかない様子で語るのは小田信司さん(仮名・35歳)。業務でミスをしたことは一度もなく、人間関係もうまくいっていたという小田さんにとって寝耳に水だった。
「心当たりがあるとしたら、以前上司に、最近体調が悪いとポロッと話したことがあって。そのとき『辞めたいのか』と聞かれました。僕は『働き続けたい』と答えましたが、もしかしたら、それが原因だったのかもしれない。でも、世間話でのことだったし、それがきっかけになるとはとても……」
そもそもこの企業は斡旋業者から聞いていた条件とは、あまりにもかけ離れていた。
「斡旋業者からは、『この職場はみんな優しいし、残業はない。有休も取れます』と聞いていたのに、実際、残業は月80時間以上。しかも、会社の決まりで月25時間以上は、残業時間をつけてはいけないということになっているんです。なので、ほぼタダ働きでした」
過酷な労働条件の末、試用期間が過ぎると突然の解雇。その後、心身ともに体調が悪化し、夜中に吐いたりするなどの症状があり、現在は心療内科に通院しているという。確かに体調の悪さは影響していたかもしれないが、厳しい労働条件でも、「正社員になれると思い、ひたすら頑張っていた」という小田さん。
「試用期間」という言葉 には、会社が本採用しないのも自由、のようなイメージあるが、そんなことはない。法律的には、試用期間でも雇用契約が成立していて、普通の「社員」と同じなのだ。実際、とある病院で、試用期間にかなり重大なミスをしても「改善の余地がある」として解雇が無効とされた判例がある(東京地裁平成21年10月15日)。
もっとも、小田さんのケースのように「この会社にいても不幸」みたいなブラック企業の場合、解雇取り消しよりも、解雇予告手当を請求してとっとと辞めたほうがいいのかもしれないが……。
― [ブラック化する日本企業]の闇【8】 ―
