人気作家3人が監督した、“欠落”から始まる物語――舞城王太郎の『BREAK』はかなりぶっ飛んだ作品

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グロテスクなのにハートウォーミングな『BREAK』



 前の二つの作品に比べると、舞城王太郎の『BREAK』はかなりぶっ飛んだ作品だろう。

 冒頭、血まみれで倒れている主人公のカットから始まり、次のシーンでは何事もなかったかのように喪服を着た映像に切り替わって、ちぐはぐでシュールな会話が繰り広げられる。かと思うと、今度は休日のオフィスの一室に切り替わり、これまたぎこちないやりとりが交わされていくのだ。

ぼくたちは上手にゆっくりできない。/劇中画像5 この作品のテーマは“上手に休めない”。主人公・黒須(佐藤貴史)は、会社の応接室で大怪我をしているところを発見される。後日、休日だというのにオフィスで仕事に取りかかっていた黒須は、やたらとコーヒーを淹れたがる同僚の濱崎(岸井ゆきの)から意味不明のちょっかいを受けているうちに、自分の行動に自信が持てなくなっていく。現実と非現実のあいだをぬるっと行き来する奇妙なストーリーだ。

 登場人物が、みなくどくどしいほど言葉にこだわる一方で、肝心のシーンはすべての言葉をはぎ取られる。暴力、不条理、ナンセンスなギャグ……人を食ったようなシーンの連続に最初は面食らう。ところが、点と点がつながった瞬間、物語が一気に加速する。グロテスクで素っ頓狂なのに、最後はハートウォーミング。これもやっぱり舞城作品の本領といったところだろう。

3つの作品のキーアイテムは「コーヒー」



 “上手に眠れない”、“上手に微笑めない”、“上手に休めない”。一様に“できない”から始まる物語たちは、どの作品も最初から欠落を抱えている。そもそもこの映画は、言葉で表現することを生業にしてきた作家たちが、言葉だけでは表現“できない”ことを追い求めてつくりあげた映画なのだ。

 ゆっくりするということの意味。

 時間を費やせばいい? くつろいだ状態になれればいい?――どれもしっくりこない気がする。それは言葉だけではすくいとれないものだから。私たちは何かに仮託して分け合いながら、その営みの輪郭をすこしずつ確かめていくしかない――色も温度も香りも違う三つの作品の中で、ゆっくりと湯気をたてるコーヒーは、そんなささやかだけれど大切なことを教えてくれる。

<TEXT/倉本さおり>

●『ぼくたちは上手にゆっくりできない。』
2015年3/28(土)~4/10(金) 2週間期間限定レイトショー
ユーロスペース(渋谷区円山町1-5)にて公開中!
公式HP www.realcoffee.jp

●来場特典! 書き下ろし短編小説集
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