異物混入を未然に防ぐ「第三者機関」立ち入り検査って?マクドナルドの検査に密着取材!
昨年末から今年にかけて、食品への異物混入が相次いで報じられました。まるか食品の「ペヤングソース焼きそば」、マクドナルドのハンバーガーやチキンナゲット、日清食品「日清スパ王プレミアム」などなど……。
そこで、注目を集めているのが衛生検査を行う「第三者機関」です。文字通り”公平な第三者”という立場から、異物の鑑定や、店舗衛生検査によって食中毒防止や異物混入防止策が適切に講じられているか審査する専門家集団なのだそう。果たして、その実態は?
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「検査員のバックグラウンドはさまざまで、食品衛生の知識を持ち、訓練を受けた者です。私自身は保健所OBですが、まったく分野が異なる企業出身の人もいますし、年齢もバラバラ。企業が設定した検査項目に基づき、キッチンにおける異物混入対策や衛生管理がなされているかどうかを調べます」
こう教えてくれたのは、第三者機関のひとつであるコロナ技研工業の鈴木さん。
ここのところの異物混入騒動で問い合わせや取扱件数は当然ながら増加していると言います。鈴木さんはこの道、15年以上になるという大ベテラン。現場では一体どのような検査が行われているのでしょうか。マクドナルドの臨時衛生検査に同行させてもらえることになりました!
鈴木さんが店舗を訪れたのは午後3時頃。店長に声をかけ、バックヤードで着替えるところからスタートします。マクドナルドのエプロンを身につけ、クルー帽をかぶったら準備完了。キッチンに入る前に粘着クリーナーでシャツなどについたホコリをとり、ひじまで念入りに洗いします。
鈴木さんの手には144項目の細かいチェックリストが。項目は、「マクドナルドが自主基準と法律やガイドラインから保健所等と技術交流して作成したもの」で、これに基づいて日々店舗の自己点検と、第三者機関の定期外部衛生検査(各店約2時間)を行っているそうです。
今回の臨時衛生検査では、「異物混入対策」に絞った40項目の抜き打ち検査(各店約30分)を全店舗で行います。コロナ技研工業を含む4社で、約3000店を回るので、鈴木さんも大忙しだとか。
まず、鈴木さんがチェックしたのは調理器具などを洗浄するためのブラシ類。切れ毛や破損、変形がないかを一つひとつ確認していきます。本来、定期的に新品に取り替えるものですが、万が一古いものが使われていると、抜け毛や切れ毛による異物混入の原因につながると言います。
次に取り出したのはジュースなどを計る軽量カップ。プラスチック製品は、異物混入の原因となるヒビや欠けをチェック。棚に入っているものをやはり一個ずつ取り出し、念入りに調べます。
トレイなどを洗浄する機械や業務用冷蔵庫では、主に連結部にあるゴム製のパッキンやねじをチェック。古くなって劣化したゴムは割れやすくなり、その破片が異物混入の原因に。また、ゆるんだねじがないかどうかも重要な検査項目です。
ドリンクマシーンなど細部が見えづらいものは、ポケットから取り出した携帯用ライトを当てながらチェック。ヒビ割れや汚れもチェックします。
また、コンパクトデジタルカメラも検査員の必須アイテム。検査をしながら、キッチンやアイテムの状況を次々と写真におさめます。これはのちほど、写真付きレポートとして本部に提出するのだそう。
ハンバーグなどを焼くヘラはヘラ先の破損や反り具合、突起などをチェック。揚げ物用のカゴはワイヤー部分に注目。ワイヤーがゆがんでいたり、切れている部分があった場合は店長に交換を提案するそう。もともと頑丈なつくりなのですぐどうこうということはなくても、何かのはずみでワイヤーが折れて異物になる原因を早めに回避するのだとか。
この他にも、紙パックやトレイなどの保管状況(ホコリや虫が入らないようビニールの口を閉じているか、など)、油脂を含む汚水が排水管に流れ込むのを防ぐ「グリストラップ」の清掃状況、ゴミの捨て方に至るまでくまなくチェック。
最後に、検査結果を店長にフィードバックします。鈴木さんから「揚げ物用カゴのワイヤーが切れているところが一カ所あったので早めに取り替えるといいですね。それ以外は問題ありません」と言われ、店長もホッとした様子でした。
それにしても、ドラマでよく見る“神経質なお姑さん”もびっくりのすさまじいチェックぶりでした。うちの台所なんか絶対見せたくないと冷や汗をかく思いでしたが、飲食店はどこもこんなチェックをしているんでしょうか……。
「異物混入を防ぐために見るべきポイントは基本、どこも同じです。ただ、マクドナルドは食中毒対策や記録管理を徹底しているため、検査時間も項目も突出して多いと思います。今日は臨時検査だったので、約30分で終わりましたが通常検査の場合は2時間かけて、さらにじっくり調べます。他の企業では通常検査が約30分間ですから、およそ4倍かかるわけです。
ただし、そこまでやっても異物混入を100%防ぐのは難しいんですよね。大勢の人が関わる以上、何かしらのミスや事故は起こります。ただ、第三者によるチェクが入ることは、ミスをあらかじめ予見し、最小限に抑えることにつながります。ふとした気の緩みや見逃しなどが起きないよう、目を光らせ、リスクをゼロに近づけていくのが我々の仕事なんです」(鈴木さん)
仮に、1店舗で年に1件、何かが混入するだけで、マクドナルド全体で年3000件に達してしまいます。外食産業全体で見たら、数十万件になってしまうでしょう。それを防ぐ「第三者機関」の役割は、今後ますます高まっていきそうです。
<TEXT,PHOTO/島影真奈美>
そもそも「第三者機関」って何?

異物混入を受けて全店を臨時衛生検査


こんな姑がいたら嫌だろうな……
