「イヤァオ!」の中毒性を解き明かす/中邑真輔インタビューVol.1【プロレス女子の手記6】<後編>

現在の中邑選手と言えば、スタイリッシュなコスチュームに、“クネクネ”と形容されるしなやかでセクシーな動き、そして「イヤァオ!」という中毒性のある言葉。「イヤァオ!」の動画をリピート再生したり声に出したりすると、不思議とカタルシスを感じる。まるで呪文のようだ。

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――聞いて一発では分からない、ということですね。

写真1中邑:そうですね。「『イヤァオ!』ってなに?」というフックはあると思います。本人としては説明しようがないんですけど。変化もするし。言語化できない心の叫びですから。あとは何だろう? 感覚的にだれしも経験があったり、そういう言葉を持っていたりするかもしれないという。投げかけ。それプラス、共感。プラス、どうでもよさ感(笑)。

――共感というのは?

中邑:言葉にならない言葉を吐き出したい、という共感ですかね。たとえば、感極まって猫を踏んづけたような声を出す人がいたとして、それをどうにかこうにか文字化したら、「イヤァオ!」みたいな言葉になったり。

――みんなが吐き出したい気持ちを、中邑選手が代弁しているというような?

中邑:僕は自分のやりたい事をやりたい風にやっているんです。それはどう解釈されてもいいとも思っています。受け取るほうも一方向からではないですし。人間ですから、人によって感じ方も違いますよね。こうじゃなきゃいけないというのは、まったくないので。それこそ僕が起こすアクションに嫌悪感を抱いてもいいし、称賛を送ってくれてもいい。

中邑:じゃあ何を求めているかというと、リアクションです。投げかけたものに対して、なにか変化や反応があるということに快感を覚えます。自分が生み出したものが勝手に独り歩きしている、というのが面白いですね。いろいろな解釈をされるというのも、目には見えないもので面白い。

――ご自身が意図したことと違う捉え方をされるというのは、誤解されることもあると思うのですが。

中邑:誤解されてもいいんですよ。まずは自分がやりたいようにやれたかが重要だと思っていますから。イヤァオというのはたまたま言葉にしただけですけど、たとえば僕の必殺技である“ボマイェ”は、スワヒリ語で「やっつけろ」という意味なんです。モハメド・アリがジョージ・フォアマンとキンサシャで戦ったときに、観客が「やっつけろ!」と熱を帯びて発した言葉なんですよね。もの凄くパワーのある言葉だと思いました。それと、自分とアントニオ猪木との関係性上、猪木の“ボンバイエ”を連想させる。

中邑:語源は一緒ですが、ボンバイエの場合は、アリ側のスタッフが「アリ・ボンバイエ」という曲を作ったとき、ボマイェを聞き間違えたのか、ボマイェをボンバイエにしたっていう経緯があるんです。当時の自分はまさに殺しにかかるようなスタイルだったので、フィットすると思って付けました。

――ありがとうございました。中邑選手の言葉に対する貪欲な姿勢が、イヤァオの中毒性に繋がっているような気がします。

写真2

CAP:国際音声記号・一覧表より

 音声学的にもう少し分析すると、イヤァオ【i y a o】はすべてが母音、ないしは母音に近い音(半母音という)で構成されている。母音は響きがよく、エネルギーがある音。

 さらに、「母音→半母音+母音→母音」と、母音の響きがダイナミックに変化する旋律が美しい。同じ投げかけでも、「オイ」の場合、同じ母音の連鎖ではあるがそこまで音の変化は生じず、最後は口の開きが狭い「i」で終わっているため尻すぼみな印象がある。言うなれば、アントニオ猪木の「オイ!」よりも、中邑の「イヤァオ!」のほうが解き放たれた自由さがあるのだ。

 中邑真輔のヒストリーを語る上で欠かすことのできない、アントニオ猪木との複雑な関係。Vol.2では、禁断の「猪木発言」の真相に迫る。

写真3<取材・文/尾崎ムギ子 撮影/タカハシアキラ>

尾崎ムギ子
体当たり系取材を得意とする赤毛の汗かきライター。東京生まれブルーハーツ育ち。ロックな奴はだいたい友達
新日本プロレスブックス 中邑真輔自伝 KING OF STRONG STYLE 1980-2004

かつて“選ばれし神の子”と呼ばれた男が、濃厚人生を激語り。
※本書は上巻です。下巻はコチラ




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