『刀剣乱舞』で妄想をふくらませる女性たち
⇒【前編】はコチラ
ゲーム内にストーリーらしいストーリーがないので、その穴埋めをするのに二次制作をする余地がものすごくたくさんあります。
例えば、土方歳三が持っていたという和泉守兼定と堀川国定は、ペアにすると特別なセリフをしゃべったりして、カップリングされています。でも二人の物語を読んだり聞いたりすることはありません。カップリングの設定だけを提供して、「あとは好きに妄想しなよ」ってことなんです。
これはもう妄想大爆発ですよね。国定はとても兼定を慕っているから、きっとこんな物語があるはず……なんて妄想が膨らみます。
そう、二次制作を楽しんでいる人たちにとって、刀剣の種類が変更されるということは、これまで作った制作物に齟齬が出るかもしれないという恐怖なわけです。
運営が本当にうまいと思いますけど、刀剣男子をそこそこ集めて、鍛刀してもなかなかレア男子が出てこなくて、「もうそろそろ面倒くさいかな……」と思う頃に、イベントや新規合戦上のオープンがやってきます。
大阪城の地下がダンジョンになっていて進めていくと、そこでしかもらえない刀剣男子がいたり……。
ゲームをやっていると、ちょくちょく刀剣男子が「燃えて記憶がない」などと意味深なことを言います。登場する刀剣はちゃんと史実を踏まえてキャラ設定されているんです。
大阪城で秀吉とともに燃え朽ちてしまった刀剣などは、こんなふうに忘却のセリフを吐くのです。ゲームをやるだけで、メラメラと本物の刀剣への興味がわいてきます。そりゃ刀剣カタログが売り上げ1位になるわけですよ。
しかもですよ、同じ「粟田口」の刀剣同士や、新選組隊員が持っていた刀剣同士は、コスチュームに共通点があったり、実際の刀剣の鞘の色が衣装の色になっていたり、家紋や柄が似せてあったりするんです。本物を見ると、キャラへのこだわりが見て取れます。こりゃ本物を見に行きますよ!!
というわけで、思いつくだけざっと上げましたが、基本的には「ものすごくこだわりを持って作った、ゆるいゲーム」です。遊ぶのは簡単だけど、触れれば触れるほど、歴史や刀剣マニアもうなってしまうほどのネタが仕込んであるわけです。
もちろん、二次制作で存分に楽しめる余地も残してある。ゆるいゲームだけあって楽しみ方は人それぞれ。こりゃもうヒットは自明の理ですね。
<TEXT/和久井香菜子>
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【和久井香菜子(わくい・かなこ)】
ライター・イラストレーター、少女漫画コンシェルジュ。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。ネットゲーム『養殖中華屋さん』の企画をはじめ、語学テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。街で見かけたおかしな英文から英語を学ぶ「Henglish」主宰。
魅力その3:二次制作が楽しい
魅力その4:飽きた頃にイベントがある
魅力その5:本物が見たくなる
和久井香菜子
ライター・編集、少女マンガ研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。英語テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。視覚障害者によるテープ起こし事業「合同会社ブラインドライターズ」代表