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セレブ邸はゴミ屋敷だった!トイレにはなんと…お掃除スタッフは見た

【働く女が見た「お仕事の裏側」お掃除サービス編(2)】  たくさんの仕事を転々としてきた森尾山(もり おやま)が、実体験をレポートします! お掃除サービスを頼んだことがある人もいるでしょうが、働く側から見たウラ事情は……?

ゴキブリの死骸に、使用済みナプキンの山……

 クライアントが支払う金額は1回につき2~3万円ほどだった。だいたい週に1回、一ヵ月4回というサイクルである。スタッフは当然、個人情報を根掘り葉掘り聞いてはいけないが、それでも何となく情報は拭き取れる。  つまりは単純にお金持ちなのである。最新型の掃除機を3台も持っていながら使い方を知らなかったり(私達スタッフのために買ってくれたのか?)、食器の在処がわからなかったり(盗難に遭っても気づかないだろう)、さまざまである。
汚部屋

写真はイメージです

 一件、強烈な家庭があった。 「ここだけ震度8の地震があったのでしょうか」  と思わず私がつぶやいたら、 「そんな綺麗な表現したの、あなたが初めてだよ」  と先輩に返された。  どれほどの汚部屋か想像していただきたい。今流行りのゴミ屋敷である。家族構成は夫婦と子供2人。誰かひとりくらい救世主がいてもよさそうだが、たくさんある部屋がまんべんなく汚かった。  流し台は食べ残しやカピカピになった食器で埋め尽くされ、洗面台には使用済みの歯ブラシが10数本(4人家族なのに)、バスルームには髪の毛やカビや正体不明のぬめりがびっちり、さらにトイレのサニタリーボックスには使い古しのナプキンが山になっていた。  2~3時間で太刀打ちできる敵ではない。しかも下っ端=私は水回り担当なのである。

夫婦ともに医者だって

 明らかにゴミと判断できるもの、例えば山になった使い古しのナプキンやゴキブリの死骸など、は捨てても構わないのだが、どう見ても私個人的にはゴミなんですけど、的な空のシャンプーボトル(正体不明のぬめり付)などは、詰め替え用にとっておいてある可能性があるので、独断と偏見で判断してはいけない。  すなわちゴミがなかなか減らないという図式だ。掃除というより整理整頓で制限時間いっぱいになってしまう。  煤けた洗顔フォームを拭いてみたら海外の高級ブランドのパッケージがお目見えしたり、腐っても鯛な感じではあるが、小物をちまちま磨いている余裕もないのだ。 「すいません、片付けても片付けても片付きません」  掃除以前の問題だが、なんとか体裁だけでも整えておきたくて先輩に泣きついた。 「そういう時は、光るところだけ光らせればいいのよ」  平たく言うと、金属の部分やガラス、鏡などを磨いておけば、目の錯覚で全体的にきれいに見えるというわけである。  ラスト10分で、私は蛇口やら窓やらサッシやらを懸命に光らせた。  このクライアントは夫婦共々医者だった。たとえ偶然でも、この夫婦には診察されたくないものだ。 ●もりおやま http://morioyama.com/ ●森美樹:1970年生まれ。少女小説を7冊刊行したのち休筆。2013年、「朝凪」(改題「まばたきがスイッチ」)で第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)を上梓 https://twitter.com/morimikixxx ●尾山奈央:1980年生まれ。脚本家、エッセイスト。著書に『1年で20キロやせた私が見つけた月1断食ダイエット』(泰文堂) http://oyamanao.com/ <お掃除サービス篇 TEXT/森美樹>
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