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生麺か乾麺か…「年越しそば」の美味しい選び方5つと“魔法のつゆ”

 おいしく食べて、年越しを。  年をつなぐ食べ物として大晦日に出てくるのが、「年越しそば」。あまりの恒例行事なせいか、使う「そば」について、しっかりとした知識がある人って、意外と少ないのではないでしょうか? そこで今回は、年越しそばを食べる上で最低限必要な「おいしいそばの常識話」をご紹介したいと思います。 年越しそば

これだけは知っておきたい! 蕎麦をおいしく楽しむ5大ポイント

1.「生」か「乾麺」か? ⇒必ずしも「生」が上ではない! 食感の好みで選ぶべし。  本格的な手打ち蕎麦屋が乾麺のそばを出す話はあまり聞きませんが、気軽に行くようなお蕎麦屋さんが、乾麺を使用している可能性、実は少なくありません。お店に卸す製麺屋いわく、機械で製造した乾麺を使っている名店も、意外と存在するんだとか。  そうです、実は、乾麺だからおいしくないというわけではありません。つまり、生も乾燥も、どちらもおいしい、おいしくないがあるということ! 一般的に、乾麺は、「シコシコとした歯ごたえ」、生麺は、「プリプリとしたみずみずしさ」が特徴になっていますから、まずは、食感の好みで選択するのが良いでしょう。  自宅で温かいそばを作る場合、生麺の方が柔らかい食感になりがちなので、乾麺のほうが扱いやすいことも。 2.そば粉は割合が多い方がおいしいのか? ⇒オススメは、「二八(にはち)」! 十割はアタリハズレがあるので慎重に選ぶべし。  そば粉100%のそば「十割」が最高だというイメージがありませんか? 実は、そばって、本来そば粉だけではつながりにくいため、ツルツル・シコシコとした食感を作り出すには、「つなぎ」が必要。のどごしの良いそばとして最適なのが、つなぎに小麦粉を2割にした「二八(にはち)」だと言われています(おなじ部類の「外2(そとに)」は、そば粉83.3%))。  十割は、太くて硬いものが多く、麺を噛んで、蕎麦本来の香りと風味をしっかり味わうものですが、おいしい十割を作るには高度な技術が必要なため、ボソボソブツブツとしたものも出会ってしまうことも。そば粉命になりすぎるのではなく、「つなぎ」の魅力を楽しむのもひとつでしょう。「とろろ」、「海藻」、「こんにゃく」などをつなぎに使った名物そばもお試しする価値ありです。 3.「冷」か「温」か? ⇒そば本来のおいしさを楽しむなら「冷」!「温」の場合は、ゆで上がり後の水洗いを忘れずに!  こだわりの名店に行って、「温かいそば」がなかった、なんてことはありませんか? これには理由あり。そばならではの香りやコシを楽しむには、「ゆで過ぎ」こそが大敵だからなのです。つまり、そばのおいしさに徹底的にこだわるなら、「冷やし」を選ぶべき。  しかしそうは言っても、寒い季節には、「温」が恋しくなりますから、1つだけポイントをおさえましょう。それは、ゆで上がった麺をそのままどんぶりに入れるのではなく、手早く冷水で注ぎ洗いをすること。ぬめりを取った後、熱湯をかけてあたためる、このひと手間で仕上がりが数段違います。 4.「食塩不使用」ってあるけど、どうなの? ⇒おいしい麺づくりには、「塩」は不可欠!  こう書かれていると、健康面はもちろん、こだわっていておいしいのでは? と感じてしまうかもしれませんが、それは間違い。そば打ちにおける食塩の役割は、そば生地の弾力性を増加させる、乾燥を防止する、風味や食感を良くするといった重要どころ。また、気になる塩分については、ゆでている間にある程度の塩分が抜けて1人前0.1~0.2g程度となるため、心配量には至りません。 5.「藪そば」とか「更科そば」って何? ⇒「屋号」と「製法の違い」! いわゆる“黒いそば”が「藪」、“白いそば”が「更科」。  これは、蕎麦屋の看板でよく見かける2つ。老舗のブランドだと思っている人もいるかもしれませんが、正しくは、「屋号」と「製粉方法」のどちらも関係しています。特に「藪」は、元祖のお店に竹藪の茂った広い庭があったことから呼ばれるようになったそう。  製粉方法は、そばの実の黒い殻「ソバガラ」を取り除かずに一緒に挽くので、黒色。少量の塩辛いつゆにつけて食べるスタイルです。一方、「更科」は、胚乳の中心部分のみを集めた「白いそば」で、香りはひかえめ、ほのかな甘味が特徴。上品な高級そばとして人気があります。

「年越しそば」はコレで決まり

 最後におまけで、「年越しそば」の新しいご提案。「温かいそばにえび天とネギ」が定番ですが、今年は趣向を変えて、「冷やし」はいかがでしょうか。ポイントは、「卵黄つゆ」と「ショウガ」。これ、だまされたと思ってやってみて! 卵白は入れず、ワサビを使わないことが重要です。  また、つけ合わせに焼豚(市販のものでもOK)ときざみネギを添えて。この組み合わせ、斬新でやみつきになること間違いなしです! 冷やしそば<TEXT,PHOTO/スギ アカツキ> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 【スギ アカツキ】 東大卒の食文化研究家。長寿美容食研究家。在学中に基礎医学や生命科学を学ぶ。さらにオーガニックや久司マクロビオティックを学び、独自で料理研究をはじめる。モットーは「長く美しくを、簡単に」。忙しい現代女性に合わせた健康メニューが得意。ヨガ教室や人気ブログ(http://saqai.com/)も手がけている。
スギアカツキ
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12
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