●連載「ファッション誌が答えてくれない相談」08 by小林直子●
Q.きちんとしているのにだらしなく見えてしまいます。なぜ?
会社に行くときなるべく新しいものを着ているのに、何となくだらしなく見えます。理由がわかりません。どこがいけないのでしょうか?

A.カジュアルウェアは元は「下着、作業着、スポーツウェア」です
回答:小林直子(ファッション・ブロガー)
ファッション全体のカジュアル化が進み、どこへ行くにもTシャツとジーンズでOKとなりました。仕事着としてTシャツやポロシャツにジーンズという方も多いでしょう。最近はこの傾向が一層進み、スウエットパンツやパーカー、トレーナーで通勤している方も見受けられます。

実はだらしなく見える原因はそこにあります。Tシャツやジーンズがいくら新しいとしても、Tシャツはもともと下着ですし、ジーンズは作業着、そしてポロシャツ、スウエットパンツ、パーカーはスポーツウエアです。
日本でカットソー(カット&ソーを略した和製英語)と呼ばれているものは、メリヤスというニット地でできています。このカットソーは、もともと下着のためのもの。肌着をつくる素材で、肌着をつくる工場でつくられたものです。
Tシャツもキャミソールもランニングも、トレーナーもスウエットパンツも、時にはカーディガンやワンピースも、カットソーであるのなら、それはもともと下着、または部屋着、そしてスポーツウエアとしてつくられたものなのです。それがどんなに新しくても、きちんとは見えません。下着は下着、部屋着は部屋着、スポーツウエアはスポーツウエアです。

1952年、アメリカのジーンズの広告は作業着。ジーンズは、19世紀に鉱山労働者のためにリーバイスが開発したのが発祥
また、ジーンズは作業着です。工場や農場で作業するための衣服です。どたばたと作業する仕事場なら、ジーンズはそれなりにふさわしいでしょうが、お客様に対応したり、重要な会議があるような仕事場において、どう転んでも作業着はきちんとした感じに見えないのです。
同様に、ポロシャツ、パーカー、スウェットパンツはスポーツウエアですから、スポーツをする仕事場でないのなら、それがきちんとして見えるわけがありません。
けれども、もうすでに今の日本はこれらが許されているというのも事実です。Tシャツにスカートで仕事へ行っても、トレーナーにジーンズ、スニーカーでも、ジャケットからパーカーがのぞいていても、誰かから文句を言われることはないでしょう。
誰からも文句は言われないけれども、何だかちゃんと見えていない感じがする、だけれども、この楽なスタイルは変えたくない、そんなときはどうしたらよいでしょうか。方法は2つあります。
1番目は、
コーディネイト全体を下着や作業着、スポーツウエアで構成しないこと。Tシャツを着たら、ジャケットを着るとか、ジーンズではなくごく普通のスカートにするなど、下着、作業着、スポーツウエアの割合を少なくします。これだけでもかなりよくなります。
2番目は、形はTシャツであったとしても、
生地をメリヤスではなく、例えばシルクやウールなどの布帛にするやり方です。布帛(ふはく)とはメリヤスやニットではなく、織物という意味です。