
まず、刑法上の原則として、行為者を罰することができるのは、物事の善悪を判断し、その判断に従って行動する能力(これを「責任能力」といいます。)がある場合だけです。
責任能力が行為時に欠けていたり(心神耗弱)、全くなかった場合(心神喪失)には、刑が軽くなったり罰せられなくなったりします。では、酔っ払って酩酊状態になれば、何をしても心神耗弱や心神喪失となって許されるかといえば、そうではありません。
なぜなら、責任能力がなくなるくらい酔っ払うこと自体がそもそも悪いため、責任能力があるときに自分の意思で酔っ払って犯罪行為をした以上、その犯罪は行為者の意思で行われたということができるからです。
したがって、酔っ払っていたからといって何でも許されるというわけではなく、酔ったらやってしまうだろうと分かったうえで酔っ払っていた場合には、犯罪が成立する可能性があります。

鳴海裕子弁護士
忘年会や新年会のシーズンになりましたね。お酒の席での失敗談は、本人は笑いごとで済ませられても迷惑をかけられた人はそうはいきません。お酒は節度を守って楽しむようにしてくださいね。
<文責/鳴海裕子弁護士(アディーレ法律事務所)>
【鳴海 裕子】
弁護士(東京弁護士会所属)。札幌大学法学部卒業,北海道大学法科大学院修了。弁護士法人アディーレ法律事務所。女性が法的トラブルに巻き込まれる機会が増えてきている今日、女性にしかわからない問題や,男性には話しにくい問題を解決し、女性の社会進出をサポートするため弁護士として職務に励んでいる。『特盛!よしもと 今田・八光のおしゃべりジャングル』(読売テレビ)に出演