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顔だけいい「顔だけ男」を呪った話【こだま連載】

 いいわけがない。だが、勝手に電話を切られ、その1分後には部屋に上がり込まれた。ふたりは付き合っているという。ここは地元の人間がやってこない安住の地だと思っていたが、わざわざ私の母に連絡先を聞き、旅のついでに寄ったらしい。あんなに呪いをかけたのに、奴はまだしぶとく生きていた。相変わらず今田は髪の乱れを気にして熱心に鏡を覗き込んでいる。気持ち悪い男だ。  部屋に居座られても困るので、二人に誘われるままボウリング場へ行った。スコアが100もいかないのに、投球時いかにもそれらしく脚をクロスさせる今田にイラっとする。ラーメンを食べた。パフェも食べた。最後のほう若干仲良し三人組みたいになって居心地が悪かった。でも悪い印象のまま別れるよりもいいだろう。これを今田との思い出のすべてにしよう。  そう考えを改めようとした矢先だった。 「やっぱこだまさんは農家顔だと思う。何育ててるの?」  そう訊かれ、もうどうでもよくなって 「かぶ(おまえを許さない)」と答えた。  あれ以来一度も今田の姿を見ていない。 ※当連載は、同人誌『なし水』に寄稿したエッセイ、並びにブログ本『塩で揉む』に収録した文章を加筆修正したものです。 <TEXT/こだま>
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