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イルカをキャッチ&リリースした父【こだま連載】

こだまの「誰も知らない思い出」 その8】

誰も知らない思い出――――――――――――――――――
 自身の“愛と堕落の半生”を、ユーモアを交えて綴った『夫のちんぽが入らない』(1月18日発売)が早くも話題の主婦こだま。

 彼女は閉鎖的な集落に生まれ、昔から人付き合いが苦手で友人もいない。赤面症がひどく、人とうまく話せなかったこだまはその日の出来事をノートに書いて満足するようになった。今はその延長でブログを続けている。

 家族、同級生、教員時代の教え子、相部屋の患者。当連載は、こだまが、うまくいかないことだらけの中で出会った、誰も知らない人たちについての記録である。
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イルカをリリースした父



 暇を持て余し、ひとりで実家に帰った。私には昔から友人がいない。一緒に出掛けたり話し相手になったりするのは家族だけである。

 この日、家に到着すると肩からクーラーボックスを下げた父がいた。知人の小型船に乗せてもらい釣りを楽しんで帰ってきたばかりだという。クーラーボックスを開けるとカレイが70匹も入っていた。

「クジラを釣っちまったのよ」

 開口一番、父は神妙な顔で言った。

「クジラ? 釣竿で?」

「そう。海に放してやったけどな」

 本気だ。大真面目だ。もともと冗談を言う人ではない。

「父さん、それほんとにクジラだった? クジラは釣れないよ。転覆するよ」

「・・・・・・じゃあ、あれはシャチか」

「シャチも釣れないと思うよ。シャチってのは黒い体に白い丸のついた大きいやつだよ」

「・・・・・・シャチじゃねえな」

 話がどんどん怪しくなってきた。

「名前はわからんが、そいつは遊んで欲しくて船の周りを3頭でぐるぐる回っていたんだ。遊んでやろうと思ったんだけどよ、釣っちまったわけだ。ガハハ」

 ガハハじゃないよ。ものすごい力で船ごと引き摺られたのち、釣り糸が切れたという。もしやイルカではと思ったが、この世にイルカを知らない大人がいるだろうか。念のため水族館のHPを開いて見せると「そうそう、これ」と嬉しそうに答えた。イルカである。しかも「可愛かったナァ・・・・・・」などと悪びれずに言う。海のアイドルになんてことしてくれたんだ。私はこの先イルカを見るたび感傷的な気分になると思うが、父は「遊んだナァ・・・・・・」と懐かしむのだろう。納得いかない。

イルカと戯れる父

イルカと戯れる父/イラスト:こだま


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父と一緒に怒られる私

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夫のちんぽが入らない

交際してから約20年、「入らない」女性がこれまでの自分と向き合い、ドライかつユーモア溢れる筆致で綴った“愛と堕落"の半生。“衝撃の実話"が大幅加筆修正のうえ、完全版としてついに書籍化!




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