霜降りの牛は、歩けない、失明、薬づけetc…まだ霜降り肉が好きですか?
健康な牛を食べたほうがいいよと言われて、そんなの当たり前じゃないのと思ったら、ちょっと世間知らずかもしれません。
私は現在、焼肉店の料理長をしていますが、お客様に、「出荷の直前までちゃんと歩けて運動できている牛ですから美味しいですよ」とリコメンドすると、え? 歩けるのが素晴らしいの? ほかの牛はどんな? という質問が返ってきます。
サシのたくさん入った霜降り肉の牛には、太って歩けなかったり、糖尿病のような症状で目が見えなくなっていたりする牛がいるのです。無理に太らせているから病気になりやすく、予防のために薬もやたら打つことになります。
牛舎の中にギュウギュウ詰めなんてシャレにもならないことで、よくネットで写真が回ってきますが、フォアグラになるガチョウ小屋と変わりません。
どんな牛でもこういう無理をさせれば霜降りになるのかというと、実はそうではないのです。
もともと、日本の黒毛和牛は赤身に脂が入りやすかった。そこに肉牛農家の方々が工夫に工夫を重ねて、サシの割合を増やしていった。そういう経緯があります。
では、なぜそうしたのかというと、そのほうが美味しいと確信していたからというよりも、赤身の強いアメリカやオーストラリア牛と、見た目の差別化をはかりたかったからじゃないかと思います。
1990年代に導入された牛肉自由化によって、安い輸入牛と競争することになったときに、肉牛の農家さんたちはねじり鉢巻で(見てませんが)考えた。
どうすっか、と。このまま黙って壊滅を待つのかと。
その答えが、霜降りの、一目瞭然にピンク色の牛肉を作ることと、格付けをすることだったんじゃないかと。格付けと聞くととっさに国際的な評価なんだろうと思ってしまいますが、A5とかB3とかの牛肉格付けは、日本食肉格付協会という純国産の公益社団法人(1975年設立)が定めているものです。
ふつう動物にあんなに「サシ」は入らない
輸入肉と闘うための必死の工夫だったのだが…
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