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満島ひかりが歌い踊るMVが300万回再生。“うまい”とは違う魅力とは

 音楽プロデューサーの大沢伸一が率いるプロジェクト、MONDO GROSSOが14年ぶりのアルバム『何度でも新しく生まれる』を発表しました。  ゲストボーカルのbirdやUAといったおなじみの顔ぶれに加え、女優の満島ひかりも参加して話題を呼んでいます。 ⇒【YouTube】はコチラ MONDO GROSSO / ラビリンス http://youtu.be/_2quiyHfJQw  彼女が歌い、踊りも披露した「ラビリンス」のMVは300万回再生を超える勢いで、6月19日に出演した『ミュージックステーション』でのパフォーマンスも大好評だったそう。

「満島ひかりです」と主張しない歌声

 もともとFolderやFolder5などのグループで音楽活動を経験し、ドラマやCMなどでも達者な歌を披露していて、実力は折り紙付き。というわけで、改めてじっくり「ラビリンス」を聴いてみると、発声のトーンの細やかなのに驚かされます。
満島ひかり

満島ひかり

 といっても、“歌うまいなぁ”とか“表現力ハンパねぇ”というのとは逆で、力を込めない気づかいが行き届いている。つまり、“アタシ満島ひかりです。ヨロシク”みたいな主張が一切ないのですね。歌い手は、サウンドや楽曲が美しく響くための歯車のひとつに過ぎないと理解しているのでしょう。 “迷宮”を意味する「ラビリンス」というタイトルに、おぼろげなフレーズを繰り返す歌詞。そして曲はカラオケフレンドリーな構成とはちがって、断片的なメロディが俳句のような余韻を残す。  満島ひかりの歌は、こうした要所をおさえているわけです。曲の本質をつかめさえすれば、なんなら自分の存在など知られなくてもいい。堂々とした無名性とでも呼びたい不思議な心地よさが彼女の歌にはあるのだと思います。

思い出したのが、グウィネス・パルトロウの歌

 そんなわけで、「ラビリンス」を聴いていて思い出したのが、グウィネス・パルトロウが映画『デュエット』で披露した「ベティ・デイビスの瞳」です。 デュエット とことんさらっとしているのに、引っかかる。歌メロのちょっとフラットする部分の、ふにゃっとしたニュアンスが絶妙なのです。  これが、真正直に頑張ってしまう歌手では出せない味わい。言ってしまえば色気のあるなしなのですが、ではそれはどのように決まるのでしょう?  作曲家の浜口庫之助は、こう言っています。 <才能というものは、気をつけないと、人から反感を持たれたり、うらまれたりするものだ。刀みたいなもので、しょっちゅうベロベロ出して歩くものじゃない。いい刀は鞘に納めておくものだ。> (『ハマクラの音楽いろいろ』 著:浜口庫之助 立東舎文庫 p.145)  同様に、「ラビリンス」の満島ひかりも、実に上手に我慢しているのだと感じました。 <TEXT/音楽批評・石黒隆之> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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