案外しかし、小麦粉を使ったレトルト味のレトルトカレーには根強いファンもいるのでしょう。「ボンカレー」は実に50年選手(レトルトの市販は当時世界初)、「ククレカレー」も「カレーマルシェ」も「カレー曜日」も「LEE」もブランドとして消えていませんし、新味も出てきたりして元気です。
かくいう私もそんなに嫌いじゃなくて、そのままでも食べますし、茹で卵とマヨネーズをトッピングしたり、コチジャンを入れてアレンジしてみたりして、おいしく食べます。
小麦粉入りのほうも、これはなかなかと思えるものを2品、紹介しておきます。
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「銀座カリー」(明治、180g・200円前後)

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噂の名店「珊瑚礁 湘南ドライカレー」(ヱスビー食品、150g・339円)

さて、おいしいレトルトカレーを作るのは、なぜかくも難しいのか? 某有名カレーメーカーにも聞いてみたことがあります。
レトルトカレーは見た目からは考えられないくらい繊細なもので、高圧をかけて120度以上の殺菌をすると、その前と後では味が変わるのだそうです。加圧加熱殺菌前にどんなにおいしくても、そのあとにガクッと味が落ちたりする。
逆に、殺菌前はさして特長のない味だったのに、加圧加熱殺菌しても味が変わらず、維持できている場合もある。窯で焼いてみないと出色やひびの具合がわからない陶芸みたいなものですね。
これこれこういうレシピはどうかという個人やお店からの問い合わせがけっこうあるそうですが、極端なことをいうと殺菌前の味うんぬんよりも、この加圧加熱殺菌の変化に耐えられる食材をどう発見しておくか、それらでどう構成するか、この基礎実験の経験値がはるかに大事なのだそうです。
<TEXT/畑井貴晶>
【畑井貴晶】
フードクリエイター、マーケティングコンサルタント。白金のカフェ&ダイニングバー「
blanc noir」、みなとみらい「Audi Cafe by blanc noir」をプロデュース。現在、新橋「
炭火焼肉有田牛」料理長、茅ヶ崎駅ビル「
アロハストリートカフェ」のフードコーディネーターなどを務めているが、元々はマーケティング業界に籍を置いていた。著書『大人のマーケティング』(古本のみ)。