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子供たちはなぜナチスから逃れられたのか/映画『少女ファニーと運命の旅』

 こんにちは、映画ライターの此花さくやです。平和を脅かす不穏なニュースが報じられる昨今、私たちの頭をよぎるのは過去の戦争が残した傷跡。生存している戦争体験者が少なくなっている現代ですが、映画や本から当時の片鱗を知ることができます。  ただ今公開中の映画『少女ファニーと運命の旅』は、第二次世界大戦中の実話に基づいたストーリーだということをご存知でしょうか? 今回は、その感動の実話について紹介したいと思います。
『少女ファニーと運命の旅』より

『少女ファニーと運命の旅』より

映画『少女ファニーと運命の旅』の見所

 1943年、ナチスドイツ支配下のフランス。ナチスドイツによるユダヤ人迫害がますます悪化していたフランスでは、自分たちの子供を支援組織に託すユダヤ系の親が少なからずいました。ファニー(レオニー・スーショー)と二人の妹もそんな子供たち。運よくイタリア領ムジェーヴの児童施設に送られますが、そこにもドイツ軍の影が忍び寄ります。
『少女ファニーと運命の旅』より_2

『少女ファニーと運命の旅』より

 施設責任者のマダム・フォーマン(セシル・ドゥ・フランス)は9人の子供たちに偽造身分証を持たせてスイスへの逃亡を図りますが、紆余曲折あり、なんと子供たちだけが取り残されます。そして、13歳のファニーは自分たちの力でスイスに行くことを心に誓いますが……。 「事実は小説より奇なり」。こんなことわざがぴったりの本作をより理解するためにも、実話に関する驚きの事実があるのです! 1. ファニーは13歳にして17人もの子供たちを連れナチスから逃れた
『少女ファニーと運命の旅』より_3

『少女ファニーと運命の旅』より

「妹たちが足手まといになるようなことはありませんでした。実際は17人の子供たちを率いていましたが、小さい頃から妹の面倒をみるように躾られていたので、それが功を奏したのだと思います」とインタビューで語った実存するファニー・ベン=アミさん(1930年生まれ)。(映画パンフレットより)  映画はファニーさんの著書『ファニー 13歳の指揮官』が原作。ナチスドイツ占領下の時代を子供の視点で描いた自伝小説や映画では『アンネ・フランク』や『黄色い星の子供たち』(2010年)などが有名ですが、“逮捕を逃れた子供たち”を映し出す本作も次世代に語り継ぐべき貴重な物語です。
『少女ファニーと運命の旅』より_4

『少女ファニーと運命の旅』より

 本作は、ナチスを通して浮き彫りになる人間の“残虐性”よりも、子供たちを助ける人々を通して浮き彫りになる人間の“正義”に焦点がおかれ、絶望の淵に立っていてもその瞬間を生きる子供たちの“勇気と強さ”に、人間への希望を見出すことができます。  戦争映画につきもののバイオレンスがないので、子供たちと一緒に観るのもおすすめです。
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5,000人以上のユダヤ人の子供たちを救った児童支援組織
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