子供たちはなぜナチスから逃れられたのか/映画『少女ファニーと運命の旅』
2. 5,000人以上のユダヤ人の子供たちを救った児童支援組織「OSE」は今も活動している
作中、子供たちが滞在していた児童施設は「OSE(Oeuvre de Secours Aux Enfants/Children’s Aid Society)」という組織に運営されており、今日でも活動しています。
「OSE」は1912年、ロシアに住むユダヤ人コミュニティの社会福祉と医療をサポートするためにユダヤ人医師たちとロシアの知識階級によって創設されました。1933年に本部をパリに移してからは、オーストリアやドイツから来たユダヤ人難民の子供たちをパリの児童施設に送る支援も行っていました。さらに、第二次世界大戦中はフランスにある中立地帯(フランス・ヴィシー政府)に14もの児童施設を運営していたのだとか。
しかし、ナチスドイツの下、ヴィシー政府がユダヤ人を迫害するようになると、「OSE」はユダヤ人の子供たちに身分証明書やパスポートを偽造して非ユダヤ人家庭に預けたり、アメリカやイギリスなどの外国へ送ったりと救助活動を続けました。こうして「OSE」は、1944年までに5,000人以上のユダヤ系の子供を救ったと言われています。
現在の「OSE」本部はフランスにあり、ユダヤ人コミュニティに社会福祉や医療サービスを支援しているだけはなく、身体障害者の就労トレーニングからアルツハイマー病のデイケアサービスまで幅広く活動しているそう。
フランスにおける反ナチス運動といえばレジスタンスをまっさきに思い出しますが、「OSE」をはじめユダヤ人を支援した人たちは世界各地にいました。映画に登場するマダム・ファーマン、鉄道員、農夫……“普通の大人”が危険を冒して人間の善を示したこと。私たちのような“名も無き人々”こそが歴史を作っていることを忘れてはいけない。そんな想いがこの映画には込められています。
最後に、ファニー・ベン=アミさんから子供たちへのメッセージ。
「戦争を決して容認しないことですね。人の命はかけがいのないものですから、たとえ戦いに勝ったと思っていたとしても、戦争では失うことしかありません」(映画パンフレットより)
参考:
https://www.thejc.com/culture/film/a-young-heroine-s-long-journey-1.55012
http://www.timesofisrael.com/it-could-happen-again-says-hero-of-holocaust-escape-film-for-kids/
https://childrenofchabannes.org/about-the-ose/
映画『少女ファニーと運命の旅』はTOHOシネマズシャンテほか全国で公開中
(C) ORIGAMI FILMS / BEE FILMS / DAVIS FILMS / SCOPE PICTURES / FRANCE 2 CINEMA / CINEMA RHONE-ALPES /
CE QUI ME MEUT – 2015
<TEXT/此花さくや>
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此花わか
ジェンダー・社会・文化を取材し、英語と日本語で発信するジャーナリスト。ヒュー・ジャックマンや山崎直子氏など、ハリウッドスターから宇宙飛行士まで様々な方面で活躍する人々のインタビューを手掛ける。X(旧twitter):@sakuya_kono
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