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痴漢の多くは「四大卒のサラリーマンで家庭持ち」。その驚きの実態とは

 先日、慶応大学生(25歳)による強制わいせつ未遂事件が話題になりました。被告は都内で帰宅途中の見知らぬ女性(20代)に後ろから抱きつき、「後姿を見てきれいで触りたいと思った」と後に供述しています。  痴漢やレイプなどの性犯罪事件の加害者像というと、「性欲過多の非モテ男子」「性欲が抑えられない変態」などのイメージを持つ人が多いと思いますが、この慶応生はミスター慶応SFCコンテスト(2015年)に出場するほどイケメンで、一見するとモテそうなタイプであることを意外に感じた人も多いのではないでしょうか。  日本初の痴漢の実態を明らかにした専門書『男が痴漢になる理由』(イーストプレス)の著者で、大森榎本クリニック(東京都・大田区)精神保健福祉部長の斉藤章佳氏(精神保健福祉士・社会福祉士)によると、性犯罪者の人物像は一般的なイメージと大きくかけ離れているといいます。
斉藤章佳氏

斉藤章佳氏

※以下、斉藤氏の寄稿。

痴漢の多くが「四大卒のサラリーマンで家庭持ち」

 1000名を超える性犯罪者の治療に携わった私の経験から、社会に根付いている加害者像は誤りだと断言できます。実は、世の中でモンスター扱いされがちな性犯罪者は、一見どこにでもいる普通の男性であることが多いのです。  痴漢に最も多い加害者のタイプは、「四大卒のサラリーマンで家庭持ち」。これは日本の成人男性に最も多い層で、いわゆるどこにでもいる普通の男性です。この事実に耳を疑う人は多いと思います。それは、多くの男性が痴漢を自分の問題として考えたことがないからでもあります。痴漢という性暴力は主に男性の問題であるにもかかわらず、その当事者性が当の男性には抜け落ちているのです。 痴漢に最も多い加害者のタイプは、「四大卒のサラリーマンで家庭持ち」

なぜ「普通の男性」が「痴漢」になるのか

 常習的な痴漢などの性犯罪は性欲の強さの問題ではなく、「性依存症」という病気です。そして、痴漢が始まるきっかけの多くは、日本特有の「満員電車」。満員電車は日常の中に存在しながらも、匿名性の高い非日常空間なのです。この満員電車の中で、たとえば以下のようなきっかけで痴漢行為が常習化していきます。 ・ふとしたきっかけで偶然女性の胸やお尻に触ってしまい、その柔らかさに衝撃を受けるとともに、その原体験が忘れられずくり返しているうちに常習化 ・他人の痴漢行為を目撃したことがきっかけで自分もやり始め、毎日の電車の中でくり返しているうちにそのスリルやリスク、達成感にハマってしまい常習化 ・日常的に痴漢の倒錯サイトにハマってしまい、繰り返し見ているうちに実際にやってみようという気持ちになり毎日の通勤電車内で実践をくり返し常習化 ・痴漢行為自体にスキルアップやクリア(バレない)していくゲーム感、釣りのようなギャンブル性など複合的快楽を求め常習化 痴漢が始まるきっかけの多くは「満員電車」 このように常習化していくプロセスは多種多様ですが、ストレスへの対処行動(ストレス発散)としてくり返すたびに痴漢行為は強化される特徴があります。そして、常習化した痴漢は満員電車や女性と密着した状態などの環境的条件がそろうと衝動が制御できなくなり、実際に行動に至ります。このように、痴漢行為は本人の不安や心理的苦痛を一時的に緩和するという意味で大きなメリットがある行為なのです。

「性欲」ではなく「支配欲」

 また、耳を疑う事実として、痴漢加害者はその行為をしている時に勃起していない者が半数を超える、ということが挙げられます。これはクリニックを受診した約200名の痴漢行為が常習化した患者から聞き取り調査を行い明らかになったことです。  勃起が伴わないとしたら性欲が原因ではないのではないか、さらに性欲よりももっと根深い何かが彼らの中にはあるのではないか、と私は考えました。このあたりを深く調査するために、彼らからさらに詳細にヒアリングを続けました。  その中で抽出されたキーワードは「支配欲」でした。彼らは、自分自身がストレスフルだったり自暴自棄になっているとき、自分よりも弱い者を性暴力で支配したりいじめたりすることで自らの優位性を確認するという「痴漢パーソナリティ」を持ち合わせていたのです。  そしてこのパーソナリティは、何も痴漢加害者だけでなく、男性であれば誰でも潜在的に持っているのではないかと気づくようになりました。この分析に抵抗を示す男性諸君は多いかも知れませんが、これは1000名以上の性犯罪者治療に携わってきた私の結論です。
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露出度の高い女性が狙われるとは限らない
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