――ペヤンヌさんが年齢を重ねてから『痴人の愛』を読んだ際、感情移入する対象がナオミから主人公・譲治に移っていた、という話が興味深いです。その変化を、ご自身でどう捉えていらっしゃいますか?
ペヤンヌ:自分が20代の時に年上男性に求めていた、自分の知らない所に連れて行ってくれるとか、知らない知識を与えてくれるといった部分を、自分がその男性の年齢になったら、今度は自分が与えなきゃいけないって思うようになったんです。ちょうど、30の時にブス会*を立ち上げたあたりから。
それまでどちらかというと、女性として引っ張られたいタイプだったんですけど、演出家になってからは引っ張る側にならざるを得なくなったから、気持ち的に男性化しちゃった部分もあるのかもしれません。演出家というある種の権力をもった仕事をするなかで、そこに寄ってくる男性がいるということも知りました。
安藤:「ブス会*に出たいです」っていう男の子、多いからね。そうすると、「ペヤンヌさんと話したいです」って言われる。
ペヤンヌ:そう。若い頃に比べて、男性がこちらに対してもってくれる興味のベクトルが明らかに違うんです。例えば、AV監督として興味を持ってくれているのか、それとも演出家としてなのか、女性としてなのか、30代ぐらいの頃はよくわからなかったんですけど、最近、ほぼ女性としてじゃないっていうのがわかってきましたね(笑)。
安藤:むしろ色目を使っちゃ失礼だと思ってるんだと思うよ。私が好きな監督の作品に出たいと思ったら、やっぱりリスペクトをもって近づいていくから、女を出さないもん。
――でも、羨ましいです。演出家というフィルターがあるものの、イケメンたちと触れ合えるわけですから。
ペヤンヌ:なんかちょっと聞こえが悪くない(笑)? まあ、必然的に“指示”というコミュニケーションがありますからね。自分の理想像に近づけていくわけだから、このうえなく楽しいですね。
安藤:演出家の醍醐味だよね。あと10年ぐらいしたら、ペヤンヌさんは自分で主演をやって、好きな男の子を舞台上にたくさん上げるようになるんじゃないかって、ちょっと思ってます(笑)。
ぺヤンヌ:(笑)。でも、この前、大竹しのぶさんの還暦の誕生日パーティーの話を聞いて、羨ましいなって思いました。ご自分がこれまで共演したお気に入りの男子たちを会場に全員集めていて、あれぞ人生の勝利って感じ。
ただ私の場合、元から姉御肌で年下好きで、年下と付き合ってきたタイプだったらよかったんですけど、元が年上についていくタイプだったから、今更どういうキャラで年下に接したらいいか、正直、迷走中なんです。
――同世代で同じような戸惑いを感じている女性は多いと思います。今回の『男女逆転版・痴人の愛』を通して、アラフォー女性の年下男性との付き合い方について気づいたことはありますか?
ぺヤンヌ:う~ん、甘やかしすぎたら、絶対悪い方向にいくなって分かっていても、止められないんですよね。これまで年下じゃなくても甘やかしてダメンズにしてきましたからね……(笑)。うまく育たなくても、それはそれで楽しいと思う気持ちが大事なんじゃないですかね。
安藤:40過ぎたら、もうたいていのことじゃ傷つかないっていうのもあるよね。
ぺヤンヌ:それすらも楽しんでしまおうみたいな。
安藤:傷もまた一興、みたいなね(笑)。
<TEXT/女子SPA!編集部 PHOTO/林紘輝>